ありえない結婚生活~バカ中夫と共に… -3ページ目

陳謝

皆さん、ご心配おかけしました。


ほんとうにほんとうにごめんなさい。


長い間なんの前触れもなく更新を怠ってました。





体調を壊したことも理由の一つなんだけど


最大の理由はもっと内面的なものだった。


過去を振り返ること


過ちを整理していくことに


どんどん翻弄されて疲れてしまったきがする。


突然「書きたくない」


そんな衝動がやってきて、振り払うことさえ出来なかった。



もし今現在


何もかも整理されて平和な毎日を過ごしていたらそんなことは思わないだろう。


しかし、今現在。アクアの日常はいまだ非日常的なことの連続である。


本当は、アクアは強くなんてないし


盾となって家族を守るよりも


守られていたいと思う平凡な女性である。


そのアクアがひっしこいて虚勢を張って毎日生活をし


人格が変わってしまったんじゃないかな?


っておもうほど、ヒステリックになり


結果、夫からも子供からも


「怖くてヒステリックな人」


と見られるようになってしまった。




なんで頑張らなきゃいけないんだろう?


なんで逃げちゃダメなんだろう?


あの時もっと早く、あの場所を捨てていたら


もっともっと早く楽になれたんじゃないか?


そんなことを考えるうちに


戦うアクアを書いていくことがどんどんバカらしくなってしまったのかもしれない。


読者の皆さんからは


本当にたくさん褒めていただいて


嬉しくもあったりするけど


その反面


『あくあはそんなに偉くない』


って思ったりもした。



そしてとうとう、ここの更新をストップし


アメブロを見ることさえも開くことさえも辞めてしまったのだ。



それから何日が過ぎ、少し心穏やかに過ごすことができた。


でも、やっぱりなにかひっかかる。



ブログ仲間は元気かな?


私の更新を気にかけていてくれる人がいるかもしれない。


皆はどんな状況下で頑張ってるんだろう?


このまま終わってしまっていいのかな?



結局は、離れきれずにいたのだ。


思い切ってアメブロを開いてみると数人の方からメッセージが届いていた。


みんなアクアを心配してくれている。


うん、そうだな。やっぱりここにもあったんだ。


アクアの場所が…。




そんなわけで、また少しずつでも更新して行きたいと思う。


こう思えたのはひとえに皆さんのおかげです。



更新もしていないのに毎日覗いてくれていた皆さんのおかげです。


更新していない間もたくさんの方がここにきてくれて


ランキングがほとんど変わっていないことに、本当にびっくりした。


と、同時に本当に嬉しかった。



こんなアクアですが、これからもお付き合いください。





再び…

身を持って資金繰りの現実を痛感した夫


その後の彼に変化はあったのだろうか?


そして事態を変えてしまう登場人物とは?




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




あの給料日以降。


夫はほんの少し変化を見せるようになった。


相変わらず家に居る時間は多く、


くすぶった状態だったのだが


たまに、ほんの少しの時間だが会社にも立ち寄るようになっていた。




一番の金主であった井上さんから今後の援助を断られ、


やっと事の重大さいに気が付いたのだろうか?


夫はやっと重い腰を上げようとしているかのように見えた。



この絶望的な状況の中で崩れ落ちてしまわない為にアクアが出来ること。


それは夫の精神的サポートだった。




「アクア、井上さんからお金を引っ張れなくなって今後どうしたらいいんやろ…」




「何言ってるの!


たけし君が本気を出したらなんとでもなるよ。


覚えてる?たけし君はスーパー営業マンやったんやろ?


きっちりみんなのサポートに入って売り上げが上がらん訳ないやんか!」



「でも、もう暫く営業もしてないし、


はっきりいって自信がない。


出来へん社長を見たら、社員は余計覇気が泣くなるんちゃうかな。」




「あほやなぁ。


そんなわけないやん。


みつごの魂百までやで。


そんな簡単に今まで積み上げてきたノウハウが抜けるわけがない。


以前の状態に経営が戻れば返済しながらちゃんとやっていけるねんから。


気負わないで昔どおりやればいいねん。



まずは会社に行くこと。



それからやで



。明日は会社に顔を出そうな!」




「そうやな…」



「大丈夫。たけし君なら大丈夫。」










『大丈夫。』



そういい続けることで夫には自信を取り戻してほしいとおもっていた。


すぐに回収が増えるわけではないのだが


今頑張れば2、3ヵ月後にはきっちり結果が出てくるのだ。


少しでも早く彼にやる気を取り戻してもらいたかった。




もうすぐ二人目の赤ちゃんが生まれてくるのだ。


正直このままでは出産費用も捻出できない状況だった。



夫にかけるしかない。


アクアがいくら頑張ってもお金を作ることは出来ない。


会社も、家庭も夫の肩にずっしりとのしかかっていた。




全ては自分の撒いた種…



しかし、その種から生み出された産物はどんどん重みを増して行き、


前に進もうとする夫には耐え切れないほどになっていたのだ。



突きつけられた現実。


犯した過去の過ち。



誰を責めることも擦り付けることも出来ない状況で夫は苦しんでいたのだろう。


しかし、その中で少しずつ前を向こうとおもっていてくれていたのではないかと、




そうおもう。





そしてアクアは…




アクアも同じように苦しみを感じていた。



迫り来る現実。


資金繰りから逃げることは出来ないし、


夫を責めるわけにも行かない。



しかし、何よりアクアを苦しめていたのは



夫への拭い去れない疑惑の念だった。






「なんでこんなに資金がまわらへんの?


どっかで抜け落ちてるような気がして仕方ない。


もしかして…あの人…』




事あるごとに浮かび上がってくるのは夫への不信感だった。


信じなくてはいけない。



一緒に乗り越えると決めたパートナーを信用できなくて


どうして行けばいいのだろうか?


しかし裏切られ続けた現実が


夫を信用することをかたくなに拒んでいたのだ。





前を向きながらもどこかで逃げ道を探していた夫。


その夫を信用しきれない妻。





表面上は、力を合わせ立ち直ろうとしている夫婦であっても、


水面下ではひどいものだった。



それでも何とか、二つのベクトルが


少しずつ同じ方向を向き合えばいいと思っていたのだ。



いつかきっと、



ずっと楽になるはずだ…



と。





そんなある日だった。


彼女から夫に連絡が入ったのは。



夫はそのメールをみて慌ててアクアに連絡を入れた。



「おいアクア、聞いてくれ!」




声が明かに冷静ではない。




「どうしたん?」






「驚くなよ!







実はな、










おばはんからメールがはいってん。」





夫が言ったおばはん。





それは忘れかけていたあの人物。



そう、



喫茶店のママのことだったのだ。




魔の給料日⑥

魔の給料日シリーズ最終回!!


読者の皆様お待たせいたしました。


アクアの、夫の運命はいかに??



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



約束の時間の約5分ほど前、


アクアと夫は井上さんの事務所前に着いた。


時間的にはパーフェクトである。




しかし、夫はすぐに車から出なかった。


少しこわばった顔をし、それから深呼吸をした。




それなりの気負いがあったのだろう。



「アクア、車のエンジンつけておくから。


適当にして待ってて。ちょっと長くなるかも知れんけど…」


「うん、わかった。頑張って。」


「うん、行って来るわ。」



外は小雨が降っていた。


まるでアクアたちの気持ちを投影してるかのようである。


夫は車を出ると背中を丸め、小走りで向かいの事務所に入っていった。



『大丈夫だろうか?』


不安が押し寄せる。


そんなアクアに気付いてか気付かないでか、


小さな杏里はテレビを見ながらご機嫌に過ごしていた。





「すいません、水野ですが…」


「あっつ、奥へどうぞ。」


夫が井上さんの事務所に訪れた時にはすでに阪本さんも席についていた。


予想通りである。


異様な緊張感に包まれた小さな個室。


戦いの火蓋は気って落とされた。




夫はなかなか帰ってこなかった。


事務所に入ってから一時間ほど過ぎていたと思う。


杏里は暇をもてあましてとうとうぐずり始めてしまった。



『遅いなぁ。杏里はぐずりだすし、それにもう時間がない。


今帰ってきたとしても会社に18時半までに帰って全てを仕分けるのは無理や…』



事務員の退社予定時刻は18時半である。


それまでに何とか処理をしたかったのだがそれも難しくなっていた。


夫は夫なりに今、眼の前の事務所の中で戦っていることはわかっている。


しかし、アクアも余裕がない、


苛立ちが少しずつ膨らみ始めていた。




『あかん、このままじゃ爆発しそう。』



大きなお腹で助手席に1時間座り続けるだけでも苦痛なのに、


そのうえ杏里の面度も見ているのだ。



「杏里、お腹すいた?


コンビニに行ってパンでも買おうか?」


アクア窮屈なスペースから外に出ることにした。


ずっと待っていたところでいつ帰ってくるかもわからない。





小雨の降る外の空気は排気ガスや空気中の埃なんかが


雨で浄化されたようでとても気持ちよかった。





コンビにはそこから目に見えるほどの距離に位置していた。


『少しくらい車を離れても大丈夫だろう。』


アクアはなるべ雨がかからないように杏里を抱きかかえると


小走りでコンビニへ向かった。






少しの外出はアクアにも杏里にもとてもいい気分転換になった。


イライラした気持ちがリセットされたようだ。





杏里は嬉しそうに車の中でパンを食べている。


少し気持ちが落ち着いたところでアクアは覚悟を決めた。


『会社に電話を入れないとな…』


事務員の退社時間はもう目前だった。




「お疲れ様、アクアです。」



「お疲れ様です。」



「ごめん、今いいかな?」



「はい。大丈夫です。」



「ごめんな、連絡遅くなって。もうすぐあがる時間やんな。」



「あっ、大丈夫です。」



「実はちょっと時間がかかってて、


今社長と一緒やねんけど帰るまでに


もう少し時間がかかりそうやねん。」



「そうですか、


じゃあ先に帰っておきますね。」



何かを察していたのだろうか?


嫌な声も出さずさらっとウケ答えてくれる事務員達。


そんな彼女達に心底感謝をした。


それも普段のコミュニケーションあってのものだと思う。


いつも彼女達はアクアの見方でいてれた。




しかし、営業マンはどうだろう?



夫と、社長とそれほどまで気持ちで繋がっているだろうか?


今はただ、最低限の信頼を維持する術として


彼らの退社までに給料を用意するしかない。





責任が重くのしかかる。




電話を切って一息ついた頃、やっと夫が帰ってきた。


「ごめん遅くなって。」


夫の顔に少し笑顔が戻っていた。



「どうやった?」


「満額じゃないけど


借りることが出来たわ。」





『良かった…』




ものすごい安堵感が押し寄せて言葉にならなかった。


かき集めて用意したお金と借りたお金を合わせると


何とか社員達の給料を用意することが出来たのだ。



夫の顔も緩んでいる。



二人でこうやって笑い会えたのは本当に久々だった。



「さあ、いこっか!」



夫は急いで車を会社へ向かわせた。




今回の出来事は


『お金の回らない苦しさ』


を夫の胸に焼き付けるいい機会になった。




『何とかなる』



その言葉がいかに不確実であるかを彼自身体験したのだ。


今回は確かに何とかすることが出来た。


しかし、夫は事務所の中で相当絞られたようである。



「もう今回が最後」



と念を押されてきたようだ。



「今回が最後」



その言葉が脅しではないことを彼は理解しただろう。



そう、問題は次からなのだ。





基本的な問題は何も解決されていない。


ホッとできるのもつかの間だった。


しかしアクアは信じていた。



夫さえ本気になれば売り上げも資金繰りも好転していくはずだと…



夫はこれを機に再起することが出来るのだろうか?



全ては夫に託すしかない。



そう思われた。





しかし、意外な人の出現により



自体は又変わっていくこととなるのだ。




魔の給料日⑤

ほんまにダラダラと長くなっております今回のシリーズ


次回くらいでまとめたいと思っているので


あと少しお付き合いくださいませ…



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



とにかく時間がない。


夫とアクアは時間を有効に使う為、別々に自分の出来る準備を始めた。


夫は知人に以前教えてもらった質屋に行くという。





夫の一つの成功の証でもあったロレックス。




その金色の光が今日はやけに寂しく見えた。




「質流し(質屋でそのまま商品として流してしまう)にはせーへんから。


又これで金ひっぱらなあかんかもしれんしな。」



アクアの目線に気付いたのか夫はそう一言残して家を出た。


感傷に浸っている場合ではない。


アクアにもやるべき事がたくさんあるのだ。



「よし!」


気合を入れて携帯を手に取った。


会社に電話をいれなくてはならないのだ。


それぞれの事務所では事務員がアクアからの連絡を首を長くして待っている。


給料日に、自分たちのする仕事の指示を与えてもらわないことには動きが取れない。





時間はお昼を回っていた。



当然15時までに処理をしなくてはいけないと思っている彼女達に


一刻も早く状況を伝えなければいけない。



最近の経理状況をなんとなく把握している事務員達。


その彼女達に連絡をするのは少し気が重くもあったが


躊躇なんてしていられなかった。







「ごめんな、今日給料の段取り私がするわ。


資金の関係で今ちょっとお金を動かされへんねん。


夕方になると思うけど



今日中にはちゃんと渡せるようにするから!」





なんだか意味のわからないような説明を


アクアは自分なりに明るくさっぱりと事務員に伝えた。




その気持ちが伝わったのだろう。


彼女達も


「わかりました。お願いします。」


と明るく返してくれた。


そんな彼女達の気持ちを裏切らない為にも


何とか今日を乗り切らなくてはならない。


アクアは急いで外出の準備と給料の計算を始めた。




自分達の給料をのぞいてどれだけのお金が必要なのか。


金種(札、円の種類)ごとにどれだけのお金が必要なのか。


あらかじめ算出しておかなくてはならない。




そうこうしているうちに夫が帰ってきた。



「お帰り。」




「ただいま。


とりあえずお金に換えてきたから。


45万になったわ。」




100万円の使い込んだロレックスは意外にも45万円に化けた。


ロレックスは換金率がいいのだそうだ。



それでもまだまだ足りない…


後はできる限りカードでキャッシングをするしかなかった。


キャッシングをすると来月までに返済をしなくてはならない。


それまでに確実な回収があるわけでもない。


それでも目先の目標に必死になっていたアクアたちは


来月のことなんて考えられずに居た。


今を乗り切ることだけに必死だったのだ。




夫とアクアはそれから銀行を回って出来る限りのお金をかき集めた。


そうこうしているうちに時間は過ぎていく…


間もなく時刻は16時になろうとしていた。




「ちょっと時間があるな。」




井上さんの事務所まで車を飛ばせば30分ほどである。




「そうやな…」


「ちょっとコーヒーでも飲んでいこうか。」


「うん。」




どうしてもコーヒーが飲みたかったわけではない。


ただ、どうしても一息ついておきたかった。




『本当にお金を借りることが出来るのだろうか?』



貸してもらえる自信があったとはいえ、


確実ではないその返答に夫自身心なしか不安と焦りを感じていたのだ。




その気持ちはアクアも同じだった。




「多分、阪本さんも来てるやろうなぁ。」



夫はコーヒーを飲みながらつぶやいた。



この話し合いで今日の、


イヤこれからの会社の運命が決まるといっても過言ではない。



夫は井上さんを納得させることが出来るのだろうか?



決戦の時は迫っていた。



魔の給料日④

アクアの言葉は夫を動かすことが出来たのだろうか?


魔の給料日はまだ始まったばかり?


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


今までずっと夫についてきた。


いつも事後報告で勝手に何でも決めてしまう夫。


強引で…


でもその行動力が好きでもあった。




会社を興すとき、


『そんなことは無いだろうけど


もし騙されでもして、


もし失敗してしまっても


アクアはこの人にずっと付いていこう。』



そう思ったことを今でも鮮明に覚えている。


その思いのままアクアはこれまでずっと夫についてきたのだ。


バカラに嵌ってしまうまで、どんな時も



『又勝手に決めて…仕方ないなぁ。』



と思いながらアクアは夫についてきた。




でも、今は違う。




今回は彼についていくことなんて出来ない。




ここで絶対に逃げるわけなんかはいかない。






『お願い…伝わって…』


そう、祈るしかなかった。




少しの沈黙の後、夫はゆっくり顔を上げた。


「そうやな。



俺、もう一回



井上さんに電話してみる。」



その顔は少し前のそれよりも血の通った人間らしい表情になっていた。


「キャッシングももう少しなら出来ると思う。



それから…



この時計も質に入れるわ。」



夫の腕には金色のロレックスが光っていた。


今の職業についてやっと一人前になったとき、


自分へのご褒美にかった大切な時計である。



当時100万円の代物だった。



「たけしくん…」



夫の気持ちが前を向き始めた。


そのことがアクアはたまらなく嬉しくて、


でももう湿っぽいのは嫌で、


溢れそうな涙を隠すようにくるりと方向を変えた。




「さぁ。ちょっと準備を始めるわ。」




「うん、俺は…。


井上さんに電話してみる。」




元来夫は叩かれてもへこたれない根性を持っていたはずだ。


見る影も無いその根性を見せることが出来るだろうか。


『今は信じよう。それしか出来ない。 』


そう思った。





「あっ、もしもしたけしです。


何度もすいません。



今いいですか?」



電話は案外早く繋がった。




もしかして井上さんも夫の電話を待っていたのかもしれない。


かわいい弟分の窮地を見捨てることはたやすいことではないだろう。


おそらく井上さんも心を鬼にしていたのだと今になれば思う。


それはひとえに夫の為であったと。




しかし、井上さんはそんなそぶりを見せることは無かった。


電話はそばで聞いているアクアさえ手に汗握るほどヒートアップしていた。


お互い引き下がらない。


そんな会話がまるで聞こえてくるようだった。



「お願いです。


用意できるだけでもいいんです。


何とか、


なんとかお願いします!」



そんなやり取りを何度か繰り広げた後折れたのは井上さんの方だった。


「わかりました。ありがとうございます。」


夫のその言葉を聞いてアクアも興奮を隠せなかった。


しかし返ってきた言葉はあまりにも頼りない現実だった。




「なんて?貸してくれるの?」


「イヤ、まだわからん。」




「わからん??」




「うん、貸せるかどうかまだはっきりわからんって。


とにかく200万は無理って言われた。


でも、100万は何とかなりそう。


とにかく事務所に来いって。」



「それって、


貸してもらえないかもしれんってこと?」




「ウン…まぁそうやけど多分大丈夫や。


あの人のあの言い方からしたら大丈夫やと思う。


かき集めて足りるかどうかってところやなぁ。」




「うん…」



「とりあえず17時に井上さんの会社であわなあかんねん。


給料の段取りどうしようか。」




ここで落ち込んでいる暇は無い。


状況は数分前に比べて確実によくなってるじゃないか。


きっと大丈夫。


もうそれしか術がないんだからやるしかない。



アクアは自分自身を奮い立たせた。



「わかった。


今から銀行と質屋いってとにかくお金をかき集めよう。


それから17時に私もついていくわ。


車で待ってる。


そのまま事務所に向かわないと事務員さん帰っちゃうやろ?


なんとか今日中に渡せるようにしよう。」




迷っている時間なんて少しも無いんだ。



魔の給料日③

今回で、この


「魔の給料日シリーズ」も締めくくりです!!


って言いたいことろなのだが


意外に、思った以上長引いてしまった。


後何話か続きそうである。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


すんなりと行かなかったとはいえ、


もうこれで最後になるかもしれないとはいえ、


とにかく井上さんからいい返事をもらえたことで


アクアも夫も何とか前に進む気力が沸いてきていた。




その時である。




井上さんから電話がかかってきたのは。





「井上さんからヤ。」



その夫の声を聞いてアクアは嫌な予感がした。


何か良くないことが起こる。


そんな胸騒ぎがした。


夫も同じように感じたのであろう。


少しためらいながら電話に出た。





「もしもし、はいお疲れ様です。


はい、良いですよ。」




夫の沈黙がやけに長く感じる。


『神様、お願い!!』


アクアは祈るような気持ちで電話を握る夫の姿を凝視していた。


その夫の顔が落胆に変わるのはとても…早かった。






「ちょっと、待ってくださいよ。


今更そんなこと言わんといて下さい。




ほんま、お願いします。




もう井上さんしか頼めないんですよ。」




「わかってます。


ほんまに申し訳ないと思うけど、


そこを何とか…


お願いします。


助けてください。」




『嘘やろ?』


隣で聞いているアクアも崩れ落ちそうだった。


今ここで井上さんに断られたらどうすれば良いというのだ。


どう考えてもアクアに代案なんてない。


頭の中が真っ白になった。




「はい、わかりました。」



そういって夫は電話を切った。



「なんて?」





「うん、急に



やっぱり用意できへんって。


勝手にそんな大金持ち出されへんって言うねん。



とりあえず、又かけるって



一旦電話を切らはった。」





「…。」





あまりのショックで言葉が出てこない。


夫も下を向いたまま動かなかった。





『もう、ダメだ…。』





沈黙が流れた。


すると夫は何かが切れたようにこう言い出した。








「なあ、アクア。


俺達給料も払われへんかったらもうおしまいやな




会社もつぶれる。


後は借金が残るだけや。



もう、逃げよう。


それしかない。


どっか遠い所に逃げよう。」






夫の顔は笑っているのか無表情なのかよくわからなかった。


でも、冗談で言っているのではない。


それだけは伝わってきた。



『逃げる?それも良いかもしれない。』



ふとアクアの頭にもそんな打算的な考えが浮かんだ。


そう思って下を向くと視界に大きなお腹が入ってきた。


その大きなお腹は必死に何かを伝えようと主張している。


そんな風に見えた。




『お母さん、逃げないで!』





そうだ、アクアには二人の子供が居るのだ。


小さな杏里と、


もうすぐ世に誕生しようとしている命の運命は


まさに両親の手にかかっているのだ。




今ここから逃げ出したら


アクアはどうやってこの子を世に送り出してあげればいいのだろう?


戸籍を持たない子をどうやって立派に育てていけるだろう?




そんなことは出来ない。



この子たちには何の責任も無い。



この子達をアクアは守らなくてはいけない。



アクアは母親なんだ。




「たけしくん。


アクアは嫌やで。


絶対にここでは逃げへん。



大体今逃げたらこの子達どうするんよ?」




「何とか…なるって。」





「何とかってどうなんとかなるん?



しっかりして!




たけし君はもうすぐ二児の父になるねんで!


たけし君が欲しいっていってた二人目やんか!


そんな情けないこと言っててどうするの?


何とかしよう。


何とか少しだけでも貸してくれるように頼もうや。


後は、アクアのカードで20万ならキャッシングできる。


たけし君のカードでも少しはキャッシングできるやろ?





やれるだけかき集めよう。




何とかやってみようよ。




今逃げたらもう、





何もかも終わるねんで!」




夫は何かを考えるように暫く黙り込んでいた。


そりゃ逃げるほうが楽に決まってる。


きっと、ここにいたるまででも何度も逃げたくなる事はあったのだろう。



『でも、お願い…伝わって…』




アクアは祈るように夫を見つめた。



魔の給料日②

とうとうやってきた給料日


夫はお金を用意できたのだろうか??


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


給料日の午前。


水野家には嫌な空気が流れていた。


夫の会社は給料を振込でなく手渡しで支給していた。


普段、給料日になると支給額を個別に銀行窓口で引き出し、


それを給料明細と同封して処理をしていた。


こうすることによって、


小銭の過不足無く処理することが出来るのだ。



そのためには銀行の窓口が利用できる時間。


15時までには何とかしなければならない。



残された時間は後数時間しかない。


はたして間に合うのだろうか?


しかし、手渡しで支給していたことはこの状況において緩和材料となった。




もし15時を回ってしまっても、


現金さえ用意できれば今日中に支給することが出来る。


それは手渡しであるがこそなせる業だった。




現金さえ用意できれば…



全ては夫の電話、井上さんにかかっている。


否が応でも夫に託すしかないのだ。


こまごました処理が出来ても、


アクアには大金を用意する術も人脈もないのだから。



そしてその焦りと、もどかしい思いを


強い圧力として夫に投げつけていたのだ。



夫は重い腰を上げ携帯を手に取るとベランダの方へと歩き出した。


少しでも外の光を受けながら気合を入れたかったのだろう。


これ以上井上さんにお金を借りることはたやすいことではない


夫も相当のプレッシャーを感じて居たのだろう。




「こんにちは、たけしです。


井上さん、今電話良いですか?」




「っあ、すいません。実はね。。」




「はい、そうなんです。


今日給料日で、頑張ったんですけどどうしても足りないんですよ。」




「えー、200万です。」




「そんなん言わんと、


なんとかお願いします。」



電話の向こうの声こそ聞こえないものの、


井上さんが即座に状況を察知し、


貸すことを渋っている様子が手に取るようにわかった。


もう何度もこうして借金を重ねているのだから当たり前の反応である。




それでも、何とかして欲しい。



アクアも祈るように夫の後姿を見つめ続けた。


夫自身、給料日当日になってもうこれしか手立てが無いことが重々わかっていたらしく


必死に何度も喰らいついていた。


その結果、なんとか井上さんの承諾を得ることができたのだ。



「なんとか…なったな。」


夫は深呼吸してそういった。


「でも、15時はむりや。


まにあわへん。


15時に取りに来いって言われたからな。」




「うん、わかった。


その辺は何とかするわ。


でも、ほんまに良かった。



でも、井上さん…



貸し渋ってたやろ?」





「ウン…」





「もう、次は無いかもな。


仕方ないよな…」




いつかこんな日が来ることはわかっていた。


それでも、その日が来てしまった現実は


夫にとってもアクアにとっても受け入れがたいことだった。



ギャンブラーにとってお金を貸してくれる存在が、


後始末を手伝ってくれる存在が


本人の病気を治すにあたってマイナス要素である事は


最近になってわかった事だ。



しかし当時のアクアはただ、少しでも周りのものを守りたいと必死だった。


井上さんがお金を貸し続けてくれていたことも、


当時のアクアにとっては必要なことだったのだ。



何とか会社だけは守りたい、


会社さえあれば立ち直ることが出来る



そう信じていた。


そのためにどんどん借金を重ねていたのだ。


それは夫も同じ、いやもっと強く感じていたことだ。


とにかく会社は守りたい。


給料を滞らせるわけには行かない。



その想いが廃人のような夫を動かしていたのだろう。



「とりあえず今からお金をかき集めて準備しなあかんな。


準備、しよっか。」



落ち込んでる暇など無い。


それでも動いていかないといけない。


アクアも自分に言い聞かせるように重い体で立ち上がった。



「そうやな。」


夫もやっと動く気になったようだ。


その時である。



夫の携帯に着信が入ったのは。



その電話は井上さんからだった。



魔の給料日①

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


カレンダーを見ると大きなため息がこぼれた。


後5日。


5日後は給料日なのだ。


現在アクアが把握する限り、ここ5日間の金銭回収予定は1件しかなかった。


そしてその回収額は社員全員の給料をまかなうには程遠い額だったのだ。


夫はこの事実を把握しているのだろうか?


きっと目を背けているだろう。


考えれば考えるほど頭が痛かった。


言いたくない現実だが伝えなければいけない。





夫はソファーに座って、


イヤもたれかかってといったほうが良いかもしれない。


とにかく力ない姿でタバコをすっていた。


「なあ、たけし君。次の給料日の件やねんけどな。」


【給料日】


その言葉に反応した夫は少し表情をゆがめながらゆっくりとこちらに顔を向けた。


「もう、そんな時期か…ホンで一体いくら足りへんの?」


さすがの夫も給料が足りないという事実は把握していたようだ。


「うん、次の回収を差し引いても200万ほど足りへんわ。」



「200万か…


なんとかするわ。」



そういって夫は又タバコに手をやった。




【何とかする】


そう言うときは大抵井上さんに頭を下げる時だ。


夫は井上さんのすねをかじって何とかやりくりしていた。


ほかに頼れる人は居なかったのだろう。


バカラの依存性、苦しみをわかってくれる相手は井上さんしか居なかったのだ。


当の井上さんもそんな夫の心情を理解し、


立ち直る為にとできる限りの協力をしてくれていた。


夫にとって井上さんはいわば頼みの綱だったのだ。





しかしいつまでもそんな関係を続けていて言い訳がない。


少しずつ返済していたものの夫の借金は確実に増大していた。


その現実に井上さんも頭を抱えていたのだ。



そんな井上さんの気持ちを夫は気付かずに居たのだろう。


自分がいつか回復できるまで、資金のある井上さんに甘えさせてもらえばいい。


そんな風に思っていたのではないかと思う。


そんな甘い考えで居る人間が本当に回復できるわけなんて無いのだ。




給料日前日。


アクアは気が気ではなかった。


夫の性格上、資金が手元に集まったならアクアに教えてくれるはずである。


しかしそんな連絡が入っていないどころか夫が動いている様子も無い。


目の前でジャージを着たままいつものソファーにもたれかかっているのだ。



時間が無い…



そう思って焦るアクアはせっかちなのだろうか?


痺れを切らせたアクアは我慢しきれずに切り出した。


「なぁ。明日の給料日どうにかなりそう??」


すると夫の口からとんでもない言葉が返ってきた。


「ぜんぜん考えてない。明日するから…」



ダメだ…


落胆がアクアにのしかかってきた。





給料日当日。


遅めに起きてきた夫がやっと動き出した。


そして大きなため息をつきながらアクアをチラッと見てこういった。


「あの人に頼むから、そうするしかないやろ?」


これでいいんやろ?


とでも言わんばかりの夫の態度。



『情けない…』


そんな言葉しか浮かんでこない。


夫はいつまでこんな生活を送るつもりなんだろう?


夫の気持ちを優先させようとした結果がこれである。


夫には結局逃げる場所がある。


だからそうやっていつまでも逃げることが出来るんだ。


そう思うと無性に腹が立ってきた。




「なぁ。なんで当日なん?


今まで時間あったやろ?


井上さんに借りるにしても当日じゃ向こうも困るし確実じゃないやん?


そんな風に逃げてたらアカンと思う。」





「そんなんわかってるから!


今から電話するから良いやろ!


だいたい俺にどうしろって言うねん。」





結局私も夫もぶつけどころが無かったのだ。



再生に向かってお互いに向上していきたかっただけなのに、


このときの私たちは足を引っ張り合ってもがいていただけなのかもしれない。



苛立ちをぶつけてもどうにもならない。


そんなことはわかっていたけれどとにかく不安でならなかったのだ。


そして、その不安は的中してしまうのだ。



出禁~その後

夫への気持ちについて


沢山のご意見をきただきとても嬉しかった。


なんとなく自分の中でしこりになっていることを


こうやって書き出して、アドバイスいただいたことで


あまり気にすることでもないな、という気持ちになることが出来た。


基本的にアクアは気にしすぎなのだと思う。


もっとのんびり、ゆったり生きていこう。


うん、それを今年の目標にしよう!!


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


出禁の効果は想像以上だった。


行きたくても行くことができないのだから当然である。


夫はそれから暫くを気の抜けた風船のように過ごしていた。


現実逃避の場所をなくしてしまうと


向かい合わなければいけないものが山のように押し寄せてくる。


向かい合うしか道は無いのだが、


その大きな責任に萎縮して外に出ることさえためらいながら過ごすことが多くなっていた。




あの大きかった夫は何処に消えてしまったのだろう。




特に夜更かしをしているわけでもないのに


朝が来ても布団から出ることを嫌がる夫は


まるで登校拒否をしている学生のようだった。



それもそうだ、


現実は夫が目を背けている間にどんどん悪化していたのだから。


社長として、今にも崩れてしまいそうな経営を立て直すほど


夫の心は回復していなかった。



ただ単に、バカラにいけなくなってしまっただけで、


夫の内面は何も解決をしていなかったのだ。



止まったままの夫を無視するようにそれでも時は流れていく。


否が応でも朝が来て、夜が更けていく。


支払いの日も待ってはくれなかった。





この頃会社の応対は大抵アクアを介して夫に伝えることが自然の流れになっていた。


社員達は一旦夫の携帯に直接連絡をするも、


すぐに諦めてアクアにかけなおすという二度手間を強いられていたのだ。



支払いも、少しずつ滞ることが多くなっていた。



崩れ行く信頼。


会社存続の危機。


そんな状況下で働いている社員達のことを考えると、


胸が締め付けられるようだった。




それでもアクアは夫を強制的に出社させることは無かった。


無理強いしても逆効果であることがわかっていたのだ。


今はただ、



バカラに行っていないならそれでいい。


それで納得するしかない、



そう言い聞かせ、


なんとか夫を促すような口調で立ち上がらせようとしていた。





「ねぇ、たけしくん。


朝一でなくていいから会社に顔を見せるようにしよう。


ちょっと顔を出したらそれでいいやん。


それだけで社員の気持ちは全然違うと思うで。」




「うん、わかってる。


わかってるけど待って。


ちゃんとするから。」




そう答えるものの夫は一向に動こうとはしない。


だからといって一日中家に居るのも居心地が悪いようで


夕方になると形だけ整えるようにスーツに着替え、


会社には立ち寄らないまま出かけてしまうことも多々あった。




ただ、夫の回復を待つ。




それだけが当時のアクアに出来るたった一つのことなんだと、


そう思っていたアクアは、間違っていたのだろうか?


それでも、これから少しずつよくなっていく未来を期待せずにいられなかった。




そんな期待に反して、現状は回復どころかどんどん悪化していく。


月に何度かやってくる支払日になると


資金繰りに追われることを余儀なくされた。



支払日の2、3日前には必要額を夫に提示するのだが、


一向に動いてくれる気配は無い。



「何とかするから。」


「明日考えるから。」



そういっては話に蓋をしてしまうのだ。


正直、不安でならなかった。


増え行く滞納額や請求書と反比例するかのように


アクアの希望も薄れ去っていく。



夫の残した傷跡は大きかった。





しかし、業者への滞納はまだ何とかなるほうだった。


それよりも問題なのは社員への給料である。


給料だけは遅らせるわけには行かなかった。




これだけは何とかしなくては…



その思いはなんとか夫も持ち続けていてくれたようで、


ぎりぎりになろうとも何とか用立てることを怠らなかった。



しかし、それは井上さんの理解と協力あってのことだったのだ。


それが無ければおしまいだった。




帰ってきた夫

最近思うことがる。


これはずっと思いながらも書いてはいけない気がして書かなかったこと。


夫への気持ちが薄れつつあるのだ。


ブログを書きながら気持ちの整理を続けているからだろうか?


少しずつ執着心が薄らいで彼の居ない空間が好きになってきた。


こんな気持ちは結婚してから初めてで少し戸惑っている。


未だ、朝帰りなんかをする夫。


理由は『酔いつぶれた』


だとか『麻雀してた』


なんだけど、どーでもいい。


ちゃんと連絡さえくれれば家に居なくてもどうでもいい。


そんなこと思ってると又ギャンブルされてしまうかな?



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ランキングに参加しています。

今後の展開が気になる方はポチッとお願いします。


バナー


応援ありがとうございます。


時間がある方はこちらもお読み下さい

ギャンブル依存症とは
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



井上さんとの電話を切って数時間たったころ、


静まり返った家の中に電話の着信音が鳴り響いた。


その聞きなれた着信音は電話の主が夫であることを示していた。





変な緊張感とちょっとした罪悪感が胸を締め付ける。




情報を漏らしてしまった事が心に引っかかっていたのだろう。


「もしもし」


「もしもし、俺。」


夫は力ない声でつぶやいた。


「今井上さんとおるから、少し話してそれから帰る。」


「わかった…」


やっぱり夫はバカラ屋にいたのだ。


そして井上さんに連れ戻されたのだ。


そんなことわかっていたのだけれど、


もしかしてバカラではないかもしれないというわずかな期待が


胸の奥底に残っていたことも否めない事実である。




ほぼ間違いない疑惑は確定に変わってしまった。




現実が重くのしかかる。


崩れそうな身体を片手で支え、


この言葉を夫に告げた。



「ごめん…」



夫は少しだけ間を置いて小さく「うん。」とだけ答え、電話を切った。





夫はこの後どうなってしまうのだろう?


暴力は振るわれていないだろうか?




驚くことに、アクアの頭によぎった事は夫の身の安全だった。


少し前まで怒りに支配されていたはずなのに、


夫の小さな力ない声を聞いてから、彼のことが心配でならなかった。


どれだけ憎く思っても、やはり憎みきれないのだと、


事あるたびに思い知らされる。



アクアはなんとかテレビで気を紛らわせながら夫の帰りを待った。



一分一秒がとても長く感じた。






ガチャガチャ


最後の電話から1時間は過ぎていただろう。


扉を開ける音に気付きアクアは玄関に走りよった。


夫が帰ってきたのだ。



ドアを開けるとうつむき加減な夫が立っていた。





「ただいま」


スーツを着た、立派な大人である夫の姿は


まるで叱られた子供のように小さく小さく感じられた。





「お帰り。」


そんな夫の姿を見て怒りの言葉をかける気にもならなかった。


もう十分に叱られてきたのであろう。


夫はそのままリビングに入り、ソファーに腰掛けた。



「ッタ。」


そういって右ほほの辺りを軽く押さえる夫。


あざにこそなっていないがきっと殴られたのだろう。


その時アクアの携帯に着信が入った。



「もしもし。」


「もしもし、井上です。


アクアちゃんいまいい?」


「はい。」


「たけし、帰ってきた?」


「はい、かえって来ました。」


「そうか、良かった。


たけしやっぱりバカラ屋におったわ。


俺の顔見ても目が正気じゃなかった。




『ヤバイ』って顔もせんと、ボーット俺の方見てた。


あれはバカ中の顔や。


ごめんな、俺たけしの事殴らしてもらったから。


暫く話して今は少し正気に戻ってると思うけど、俺が十分責めたから、


今日はあんまり言わんといたってくれ。」


井上さんに言われなくても、今日は何も責める気にはならなかった。


アクアももう、一連の行動で力を使い果たしていたし、


何よりこんな小さな夫に対してそれ以上に追い討ちをかける気にはなれなかったのだ。




「ほんとうにご迷惑をおかけしました。


ありがとうございました。」




「いいよいいよ。


それよりアクアちゃん、


たけしのことしっかり見といたってくれ(見ておいてくれ)。」




「はいわかりました。」




フーーー。


深呼吸をした。


とにかく終わった。



もちろん全てが終わったわけではないが、


今回の件においてはとりあえず終わったんだ。



そう思うと力が抜けた。


井上さんに話したことは正解だった。


まさか出禁なんていうやり方があったなんて知らなかったのだけれど、


その方法で間違いなく夫の行動に制限をかけることができるはずだ




しかし、まだまだ安心なんて出来ない。


バカ中に特効薬が無いということを


アクアは身をもって経験していたのだ。