名古屋刑務所で01、02年に起きた刑務官による暴行事件で、死傷した元受刑者と受刑者の遺族計5人が国家賠償法に基づき、国と当時の刑務所長、刑務官ら計11人に計約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、名古屋地裁であった。戸田久裁判長は受刑者の腹部を革手錠のベルトで締め付けた行為を違法とし、死傷との因果関係を認定。国に計8910万円の支払いを命じたが、刑務官ら個人については「原告に対してではなく、国の求償権に対して支払い義務を負う」として原告に対する賠償責任は認めなかった。

 訴えていたのは、元受刑者2人と死亡した受刑者1人の遺族。被告は同刑務所の副看守長だった前田明彦被告(48)=特別公務員暴行陵虐致死罪などで有罪、上告中=ら実行行為者とされる8人と、桜井智舟・元同刑務所長ら管理監督者3人。

 訴えによると、前田被告らは01、02年、懲らしめ目的で男性受刑者3人の腹部を革手錠で強く締める行為を繰り返し(1)02年5月には受刑者(当時49歳)を死亡させ(2)同9月には受刑者(37)を腸閉塞(へいそく)にし(3)01年10月~02年2月には受刑者(44)を心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥らせた。

 判決は検察側が刑事事件として起訴しなかったPTSDについても訴えを認めた。

 訴訟で原告側は革手錠の使用を「違法な暴行行為」と主張。実行行為者や管理監督者は革手錠の危険性を認識しながら適切な使用や注意・指導義務を怠り、個人としても賠償責任を負うと訴えた。一方、被告側は革手錠の使用を「合理的な裁量権の範囲」と主張。また公務員が他人に損害を与えた場合に国が賠償責任を負うことを定めた国家賠償法上、「個人に賠償責任はない」と争っていた。

 被告のうち前田被告ら5人は特別公務員暴行陵虐致死傷罪などで起訴され、1人は1審で無罪が確定、4人は有罪判決を受けて上告中。1、2審とも革手錠と死傷の因果関係を認めた。【高木香奈】

 【ことば】名古屋刑務所暴行事件

 02年5月と9月、受刑者2人の腹部を革手錠で締め付け死傷させたとして刑務官6人が特別公務員暴行陵虐致死傷罪などで起訴された。うち1審で有罪が確定した1人を除く5人が国家賠償請求訴訟の被告にもなった。01年12月に受刑者の尻に放水し、直腸に裂傷を負わせて死亡させたとして刑務官3人が同致死罪などで起訴される事件もあり、両事件で起訴された1人は1審で有罪が確定、2人は有罪判決を受けて上告している。

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