どうも、別れさせ屋 アクアの三郎です。そしてクリスマスにして今年最後のブログです。
その日、俺達は国道463号を埼玉県の飯能市へと車で向かっていた。
車の中には男4人。軽自動車であるワゴンRではパワーが足りない。
今、俺達が向かっている先は・・・
「畑トンネル」
埼玉県飯能市に位置し、廃トンネルとなっている。 明治に開通されたトンネルではあるが、そこには不吉な噂が絶たない・・・。
始まりは「母親とその娘の霊」が出る、であったが時が経つにつれて「人面犬」、「四つん這いババア」と、子供じみた噂が立ち始める。
霊なんてバカげたものを信じているわけではないが、ちょっとしたスリルを味わいたくて、オタク仲間4人で向かうことになった。
「幽霊って、どうすれば信じられるの?」
この男は自称“ブレイブハート”サイラス。心霊の類いを一切否定してはいるが、イベント気分で今回参加した。
「想像力がないサイラスには解らないよ」
と、サイラスの言葉に反抗したのは“ジャスティス”アオギ。
その二人を「まぁまぁ」となだめる眼鏡をかけたこの男は“ハンター”k2。
そしてこの俺“世紀末救世主”三郎。皆根っからのオタクである。
そんな4人が集まったからには、車の中はオタクトークで盛り上がり、これから起こるであろう出来事を予想だにしない。
草木も眠る丑三つ時・・・には少し早い深夜1時、俺ら4人は畑トンネル付近に到着した。
畑トンネルへの道は現在通行止めとなっている為、ここからは4人で歩いて進む。
入り口付近まだ良かった。民家が建ち並び、人の存在を感じた。
しかし、今俺達がいる場所は、街灯もなくアスファルトも敷かれていない湿った泥道。
人二人が通るのがやっとの獣道。汗ばんだ手に持つ懐中電灯2つが唯一の希望。
先が見えないからか怖じ気づいてる為か、皆歩くペースが遅い。
「ストップ!」
誰かが叫んだ。
「今、人の声が聴こえた気がした」声の主はアオギだった。
皆耳を済ませるが何も聴こえない。 「気にせいだと思う。ゴメン。」
こんな場所にいればそんな錯覚に陥っても仕方ない。かくいうこの俺も、何度も後ろを振り返っては、四つん這いババアの姿を確認してしまう。
そんな見えない存在に怯えながら歩き続けること10分程度、突然視界が開け、月の明かりも届かぬその場所に、トンネルは大きく口を開けて存在していた。
懐中電灯をトンネル内部に照らすも、ただ闇があるだけ。
この時ほど後悔したことはない。
(来るんじゃなかった)
皆口に出さずとも、その表情からありありと見て取れる。
「じゃ、帰ろうか」k2が言った。
「冗談だよ」
その考えには賛同であったが、ここでそれを出しては臆病者だ。
「とりあえず、入ってみよう」“ブレイブハート”サイラスが先を進み、皆それに続く。
トンネルは明治に作られたとだけあって、レンガ作りで、さすがに老朽化が進んでいる。
オタク4人が生み出す音以外には、何も聴こえない。
壁の染みが人の顔に見えるとの噂もあるが、今見た限りでは、そんなものは確認できない。
懐中電灯が照らす先に見えるのは、暴走族の自己主張じみた落書きや、誰かの誹謗中傷。 他にも誰か来ていたことを確認すると、少し安心する。
「なんだコレ?」サイラスが落書きの中に何かを見つけた。
「ザ・・・、ゼル。小安のファンかこいつは?」
こんなところに来ても、オタクトークを忘れないのは、さすがブレイブハートといったところか。
「あれ、もう出口か」
トンネルを50mほど歩いたところでアオギが先を照らす。その先は入り口と同じく雑草が生い茂ってはいるが、道がある。
何も起きなかった安心感と、多少なりとも残念な気持ちが絡み合う。
「よし。じゃあ帰りは動画を撮りながら戻ろうか」サイラスが携帯を取り出しながら言う。さすがに一度入ってしまうと余裕ができる。
「えー、我々は今、飯能市にある心霊スポット、畑トンネルに来ています」とk2は3流ホラービデオのレポーターと化している。
再び来た道を引き返す男4人。
呆気なくトンネルを戻り、獣道から文明を人の気配を感じさせるアスファルトの道へと戻る。
皆笑いながら話してはいるが、心なしか早足である。
皆感じ取っているのであろう・・・、今ほど後ろを振り返ることが怖いことはない!
そんな不安を払拭したくて、ついに後ろを振り返るが、やはり何もいない。
トンネルを後にしながら思うこと。
恐怖は人の心が作り出すもの。
そう考えながら、帰路に着くオタク4人。
次はどこに行こうか・・・?
