水をすくい、砂だらけになった小さな手。
太陽が傾き水面に反射して、彼らの顔に影をつくっては、ゆらゆら光る。
その横顔を、美しいと思った。
彼が指差した夕陽を、
飛行機雲を、
さざめく波を、
美しいと思ったのだ。
どんな顔をするのか、喜ぶのか、怖がるのか、泣くのか。何を感じるのか。
旅が好きだ。
「今行っても覚えてないでしょ?親が大変なだけだよ」と、まるで幼い子連れは旅に行く価値がないように言われたことがある。
嫌になると泣いて床に寝転がったり、岩のようにうずくまって動かなくなったり、せっかくの夕食も満足に食べられないまま、飽きて椅子から降りたがる子どもの食事介助をしたり、たしかに大変だ。
けれどあたしは彼らが覚えていなくても、見た景色や感じたこと、そのどれもが感性をつくっていくと思っている。
そしてあたしが覚えている。
きっとずっと、覚えている。
この記憶があたしを生かすのだ。
いつか傷ついたとき、挫けそうになったとき、どうか彼らにとってもそうであってほしい。
学校や家庭だけが自分の居場所ではないことを知っておいてほしい。
それらはほんの一部で、世界は広く、いろんな生き方があって、きみたちはたくさんの選択肢をもっていることを。
だから旅をする。
息子たちに見せたい景色が、息子たちと見たい景色が、たくさんある。
