人生は芝居のようなものである

母と子の格闘　と言って何が思い浮かぶだろう？娘と母、性格が全く違う。意見が異なって対立する。いろんなことが人生ドラマの中にはある。中には母親が大好き。親友だ！と言い切れる幸せな人もいる。私もそんなのにあこがれてたものの一人だ。

私の人生は出発からものすごいドラマチックだった。昔の加賀藩に仕えた加賀藩十村役の家に生まれた母はそれは気位の高い人で、実家に帰っても頭一つ下げない人だった。実家の近所の人に様づけで呼ばれていた母からすれば、頭を下げられることはあってもこちらは昔の使用人にお辞儀するのももってのほか。という具合で、私が人にお辞儀を返して叱られたことも何度もある。そんな昔の村役だった祖父は孫のように年の離れた娘を政治力を使って高校に入れ、職も賄賂を使って就職させるというすごい人だった。母の一番上の姉は大層美人で賢く、女学校でも一番の成績で、小学校の先生。そのうえピアノも素晴らしく演奏するという絵にかいたような優等生だった。反対に母は祖父に似たものすごく面長の地味な顔をした人で、お見合いで結婚した父が初めて付き合った異性である。その結婚も祖父の半ば政治的な腕力によって娘を押し付けた形があり、夫婦仲はすさまじく悪いものであった。教養のある父からしてみれば本も読めない、教養もない不美人の妻はかなりいらだっていたことだろう。そんなこんなでストレスのたまった父は３６差という若さで亡くなってしまった。

彼のなくなった時、彼の妻であった母は私に、ごめんね、あなたのお父さんを死なせてしまって。と私に許しを求めていた。というのも彼女の父に対する苦情はすさまじく、精神的に追いやったとみづからも悟っていたのかもしれない。そんな父の妻を私は母と書いたが、実は彼女が本当の母親なのかは定かではない。父には京都の大学時代に年上の恋人がいたらしく、彼女は彼が故郷へ帰ってきた後追っかけてきたらしい。祖母に、身分が違うからという理由で泣く泣く追い返されたそうだ。母から憎まれ、殴られて育った私には、その人が私の実の母なのではと思うことがそこかしこにちりばめられていた。

そんな母は私が難関を突破して受かった証券会社の職も、何かの賄賂かコネで入ったと疑わず、ちゃんと試験受けて入ったの？などと、とんちんかんなことを言い、わたしを傷つけるのだった。それは学校の成績、入社試験の合格果てはエリートといわれる人との結婚まで及び、何かに至ってダメで不細工なあなたのことを思って言ってるんだからと、その肉体的暴力と精神的暴力にはすさまじいものがあった。そういうことがあって私たちはもう３０年以上も口をきいていなかったのだけれど、ある時、ひょんなことからそれは生まれる前に自分たちが話し合って作り上げたドラマではなかったのかということに気づき、思い切ってわたしの方から手紙を出したのである。

確かシェクスピアだったと思うが、人生は芝居のようなものである。といったのを覚えている。悪役がいなければ良い人も際立たないし、みんなが悪人、みんなが良い人であっても芝居は成り立たないのである。そういった意味で、私たちが共有した経験はまさに、古い時代の古いエネルギーつまり、争いとか憎しみとかそういったものを終わりにするためにわざと出させてきたものだということが遅ればせながら今になって理解できたのである。

今になって彼女の嫉妬や苦しみ、憎しみというものがどこから出てきたのかがよくわかるし、それを肯定や否定するつもりは全くないが、その悪役を引き受けてくれたことによる感謝の念でいっぱいだ。

人生の苦しみは同じレベルからは抜け出ることはできない。すごく大きな観点でこのことを気づかせてくれた神様に感謝である。今は人生半ばに差し掛かって　あー死ぬ前に、このことが理解できてよかった。と思っている。人は体を持っている間じゃないといろいろ体験できないし、これからは気持ちのいいことだけに焦点を当てようと思っている。これは私個人の解釈なので、今家族が家庭内暴力をふるっているとか、どうしようもない苦しい環境にいるときはそこから離れなくてはならない。

人生は芝居のようなものである

なんでもそうだが自分の得になることに目を向けて、特になるように解釈するようにするというのは 私個人ではとても大切で、いまやっと自分を大切にするということがわかってきたような気がする。

なんでもそうだが自分の得になることに目を向けて、特になるように解釈するようにするというのは　私個人ではとても大切で、いまやっと自分を大切にするということがわかってきたような気がする。