大きくなったら
「僕は大きくなったら、サッカー選手になりたい!
今は補欠だけど、早くレギュラーになって、ハットトリックを決めるんだ。
それで、高校サッカーで優勝して、スカウトされてプロになって有名になって、
そいで、かわいいお嫁さんをもらって、子供は僕みたいな男の子がほしいかな。
で、僕の子供もサッカー選手になって、お金に困ることもなく、暮らすんだ。
おじいちゃんになってからは、孫に自分の雄姿を語るんだ。
おじいちゃんはすごかったんだぞって。」
僕が勢いよくしゃべるもんで、ユキばあちゃんは口をポカーンと開けて聞いていた。
のちのち分かったことだけど、あの時ユキばあちゃんは、補聴器をしていなくて、
僕の話が全く聞こえなかたらしい。
そんなことは知らず、その日おばあちゃんがテレビを付けたとき、
なぜこんなに大きな音で聞いているのかと不思議に思ったのを覚えている。
そうしないとテレビの音が聞こえなかったんだな…
しかしそれは、普通に聞こえる人間からしてみたら、本当にバカでかい音だった。
たぶんその時僕は、ユキばあちゃんを見下していた。
ごめんなさい。
つづく