夕焼け | アップリケをした僕

夕焼け

僕がスイカにかぶりつくと、思いっきり種を噛んでしまった。

『ガリッ』という音と共に、僕は一瞬あごが外れたようになり、口にふくんだスイカをペッと吐き出した。


「やれ、汚い」

と、ユキばあちゃん。


そう言って慌てて台所に向かい、持ってきた布巾はもっと汚かった。



うちのおばあちゃんは3年前くらいになくなったけど、年寄りはなんだか“汚い”イメージがある。

僕は、おばあちゃんの作った煮物なんかも、“汚い”気がして好きじゃなかった。

おばあちゃんの服も、臭いも何もかも“汚い”気がした。

おばあちゃんの後にお風呂に入ると、湯船にプカプカ何かが浮いていて、

お母さんは、必ずお湯を全部捨てて入れ直してから入っていた。

お母さんが言うには、老人は皮膚が剥がれ易いから…もしくはあかだと言っていた。

そんな事もあって、僕は一緒に住んでいるおじいちゃんともあまり親しくはない。



こうしてみると、知らない年寄りの家に来ている今は、なんだか変な気分だ。

僕は食べかけのスイカを片手に、天井を見上げ、改めて部屋をぐるりと眺めた。

古い棚にホコリをかぶった箱が積まれていたり、使ってなさそうな古いコップ。

そして、あせた写真が散らばっていた。

僕は棚の上の荷物を見て、ユキばあちゃんを見た。



ユキばあちゃんに、あんな高い所の掃除なんて出来るわけないや。



と、僕はふと思った。




つづく