ユキ
細い道に陽炎や蜃気楼がでるくらいの暑い真夏。
半透明の買い物袋からは、ところてんと豆腐が見える。
腰を曲げ、ぼろぼろの靴で足を引くづるようにして歩いていく。
頭には、つばの大きな麦わら帽子。
一瞬の突風で帽子は飛ばされ、横に流れていた小川へひらりと落ちた。
白髪混じりの髪に、皺々の顔。
その元気とは言えない面持ちで、水に浮かぶ帽子を何か冷静に見据えているようだった。
僕はサンダルのまま川に入り、流れてきた帽子を手に取った。
それが、ユキばあちゃんとの出会いだった。
つづく