勝負になら
ジョル兄さんが一番年上なんだし、しっかりしている。兄弟がそろってジョル兄さんを跡継ぎと認めればいいんだ。
「ありがとう、じゃあ君は味方だと思っていい?」
「もちろんよ、兄弟がみんな結束してジョル兄さんを支持すればいいと思う」
「でも、ルシールは自分が跡継ぎになりたいみたいだ」
「ぜったいにだめ」
兄弟で争ったら絶対にだめだ、帝国がなくなって、結局なにも残らなくなる。
「じゃあ、ルシールに誘われても、僕についてくれるかい?」
そうじゃない。対立してはだめだ。
「ルシール姉さんとも仲良くやろう」
「君の言っている事は理想だな。そうなれば一番いいんだが、そうはならない気がする。僕等は兄弟といっても母親がみんな違うし住んでいる所も違うから普通の兄弟とは違う。僕等が喧嘩をすると母親を巻き込んで大事になるんだ」
そうなのか。ここの兄弟はそれなりに問題を抱えているんだ。
「それに、もっとややこしい問題もある。母親と父さんとの関係があってね。父さんに寵愛されている母親の子が兄弟の中でも強くなる」
メレッサは考えもしなかったことだった。ここの兄弟はものすごく複雑なんだ。
それから、ジョルはちょっと寂しそうに言葉を続けた。
「僕の母さんは……、あまりぱっとしないんだ」
ジョルは寂びしそうにしている。しかし、なんと言っていいかわからなかった。
「ルシールの母さんは、美人で愛嬌があって、父さんに気に入られてる。だから……、母さんが可哀想だ」
ジョル兄さんは言葉につまった。母親の悩みがそのまま子供の悩みになっている。側室がたくさんいるなんて絶対によくない。
ジョルはメレッサを見た。
「それに、今度は君のお母さんが参戦するから、一波乱あるな」
メレッサはわらった。
母が皇帝の寵愛獲得競争に参戦するなんてありえなかった。そんな屈辱的な事をするわけがない。それにどうせ勝負にならないだろう。
「母はランキング外よ」
「なぜ? 父さんが一番好きなのは君のお母さんなんだ」
「まさか。おとうさんは、あたしの母さんのことなんか何とも思っていないわ」
「とんでもない。父さんが君のお母さんに夢中だってことは誰だって知っていることさ」
母が言っていることとだいぶ違う、母は品物扱いだと言っていたのに。ジョル兄さんの言う事を信じたわけではないが、それでも冗談を言っているようにも見えなかった。
「僕とルシールは歳が半年しか違わない。だから、どちらが跡継ぎになるかは微妙なところなんだ」
それは絶対にジョル兄さんだと思った。こんなことで喧嘩したら帝国がなくなってしまう。
「父さんは何か言っているの?」
「いや、まだ決めてないみたいだ」
「兄弟で喧嘩したら絶対にだめよ。ジョル兄さんが跡取りだと決めるべきよ」
「ありがとう」
ジョル兄さんはうれしそうだった。
お昼をご馳走になった。ジョル兄さんはやさしく色んな事を教えてくれる、いい人なんだが、どこか気弱に感じた。ルシール姉さんの方がはるかに気が強い。この二人の対立は難しいことになりそうだった。