日本ではペーパーゴールド免許だった私が、ここダッカで少しずつ運転をしている。
朝の通勤はドライバーのイドリスを助手席に座らせて。エアロビへのアクセスは自分一人で。
自分でも信じられないことだけれど、やっぱり自分で運転できないと何かと不便なことが多いのだ。
車がないが為に、運転ができないがために、どこへ行くにも誰か連れて行ってくれる人を待たなければいけないなんて…私には到底我慢できない。
つまりこれは、自分自身の自由獲得のためには避けて通れない道だったわけだ。
かねてから自分で運転できるようになりたいと思っていた私にとては、これは天から与えられたチャンスと心から感謝している。
「ダッカで運転ができれば、どこに行っても運転できるよ」
今までに何度もこんなせりふを耳にした。
確かに、、、、狭い道に車とリキシャとCNGと人がひしめき合うダッカ、一応の交通ルールはあっても交通マナーが浸透していないダッカでは、日本では心配する必要のないような様々な状況を想定して運転しなければならない。
道路を見れば、所々に穴が空いていたり、崩れたアスファルトがそのまま転がっていたり、その上を通ったら確実にタイヤがパンクするようなエッジのきいた金属が飛び出ていたり。
実際ここではタイヤのパンクは想定内の出来事で、スペアタイヤとタイヤチェンジの機具は必需品。
JAFのようなロードサービスなんて無いから、みんな当たり前のように自分でタイヤチェンジをしている。
また、道を走っていると所々で通りを横切るように道路が10~15センチほど隆起していて、そこでは必ずスピードを落としてゆっくりとまたいでいかなければならない。
これはスピードブレーカーといって、あえてスピードを落とさせるための対策で、インドでも同じものを見かけた。
安全対策としてはいいのだけれど、短距離間隔で隆起しているとちょっと面倒な上に、うっかり見落としていしまうと急ブレーキを踏むか、ガタンッと車内に大きな衝撃がはしることになる。
そんなダッカでは独自の、暗黙のルールがうまれているようだ。
例えばクラクション。
ここでは、ビービー、ブーブーという車のクラクションの音が耐えることがない。
「おいおい、なにノロノロ運転してるんだ~!」
「テメエ~、どこに目付けて走ってやがるんだ~!」
「オイ、ひき殺されたいのか~!」
このブービー音は、そんなドライバーの怒りと叫びだと思っていたのだが、、、、実はそれだけではなかったのだ。
道路では端から端まで車もリキシャもCNGも人も無秩序に縦横に走っているため、このブービー音は自分の存在を知らせ、相手に注意を促すための警報でもあったのだ。
追い抜く時は、「今から追い抜きますよ~!」ブッブー!。
追い抜いている最中にも「今まさにあなたの横を追い越していますよ~!」ブ~~~~~~~~~~~~~~!!!。
時にはどちらも譲らずに、お互いにブ~~~~~~~~~!!とクラクションを鳴らし続けながらせめぎ合うことも。特にバスのドライバーは運転が荒い上に、道を譲らない。
人やリキシャに対しても、「ハイハイ、ちょっと端に避けてね~」という合図を送ったりする。
基本的には車が一番強く、次いでCNGときて、人やリキシャは道路脇にずれて道を譲るようになっているようだ。
はじめはクラクションを鳴らすことにためらっていた私も、逆にクラクションで相手に合図を送らない方が危険だということが分かってからはすっかり多用している。
日本だったら控えめにクラクションプッと鳴らしただけでも睨まれるところだが、ここでは万が一接触事故や人身事故でも起こしたらそれこそ大騒ぎになってしまう。
ドライバー同士がもめ合っているといつの間にか観衆が周りを取り囲み、関係ない彼らも勝手にヒートアップして殴り合いになったり…ということもあるらしい。
一番びっくりしたのは、「万が一人をひいてしまったら、車を捨ててでもとにかく逃げろ!」という共通認識。
周りの人々が次から次へと集まってきて、事故を起こしたドライバーを引きずり出して殴る蹴るの暴行を加えるのだそうだ。例え自分は運転していなくても、ヒートアップした人々は何をするか分からないから、とにかく逃げなければいけないのだと、皆が口を揃えて言う。
「そんなの“ひき逃げ”じゃない!」と反発すると、
「良心を優先するか、自分の命を優先するか…」とドライな回答が返ってくる。
でも、それが現実なのはどうやら事実らしい。
それから、ある程度道が混み合っている時には、車線変更の度にいちいちウィンカーを点滅させない…というのも暗黙の了解のようで、どうやらルールブレーカーの多い場所では、それなりのきちんとした新しい交通ルールができてくるということらしい。
そんなダッカでの運転をこなしていれば、度胸もテクニックもついてくるのは確実だろう。
ただし、このルールが体の芯までしみ込んでしまったら、日本に帰ったときにはマナーの悪いドライバーとして周りから睨まれることになるので注意しなければ。
ちなみに、先日イドリスからは運転のテクニックをほめられた。
「後は、このダッカの交通事情を理解して、もっと慣れればすぐにいいドライバーになる!」と太鼓判を押してもらって、一気にモチベーションアップ☆
ありがとうイドリス!!!
バングラの車事情あれこれ…はまだあるけれど、それはまた次の機会に。