夕方、ポストからの手紙の束を娘が持って来てくれた中に、、白い封書があった。差出人を見ると、新卒で勤めていた時に大好きだった先輩の方の奥様と娘さん。


凄い嫌な予感がして破るように封を開け、印刷されている葉書は、訃報だった。コロナのため、お葬式は無し、亡くなるまでの状況と、奥様からの感謝の言葉が書かれていた。更に、手書きで、


はなさんは、〇〇→その会社、で、一番仕事が出来る方、と、良く話してくれました。毎年の年賀状での近況報告、ありがとうございました。


と、書かれていました。


ナカジとは、最初に配属された日本株のトレーディングチームで同じでした。私は、最初の半年は一番端のファックスやコピーの隣の席だったけど、しばらくして、ナカジの隣の席になりました。


ナカジは、30歳前くらい。ベテランのトレーダー、遊びまくり。お坊ちゃん大学卒、資産家の息子さん、都内の一等地にマンション暮らし。誰か俳優さんに似てたけどお酒の飲み過ぎで、ちょっと太ってました。新卒のナカジは、アイドル並みだったそうです。


私は、主にナカジの注文管理をしていました。おしゃべりも良くしました。好きな映画とか、音楽の話など。


当時の私は、じゃじゃ馬全開で、先輩のナカジにもタメ口。良く怒られたのが、聞こえないと、


あっ?


って聞き返すこと。お坊ちゃんのナカジは、それは品が無いから辞めろ、と良く言ってて、


オマエ、今、、また、あっ?って言ったな、やめろって言っただろっ。


言ってないっ、あい?って言ったかも。


それも辞めろ、会社の男を舐めるなっ。


とか、良く怒られてました。


ナカジは映画が大好きで、仕事が終わると、


はな、調べろっ。


と、日比谷の映画館の上映を調べさせて、


行くぞっ。


と、良く観に行来ました。メンツは、同期のUちゃんと、ナカジの同期のゴトさん。ゴトさんは、国債のトレーダーで、真後ろに座って居て、私の椅子を蹴って、、私が振り向くと、知らん顔、とか、居眠りしてることが多く、紙屑を投げて起こして、はながやったんだよ、とか、もう、ほとんど、学生のノリで、最高に楽しかった席でした。四人で映画を見た後は、いつも、映画を語りながら、ガード下にある中華料理で、餃子と小松菜ラーメンを食べました。


ナカジは、飲んで、道で寝て、とか、電車で遠くに行ってしまって、とか、マーケットのオープンに間に合わないことも良くありました。私も隠すのに必死。誰かの上着を椅子にかけてみたりして、寄り付きの注文を出し、上司が、


中島は?


と、来ると、タバコ吸いに行きました、と、誤魔化してました。そーっと出勤して来るナカジにそーっと注文を引き継ぐ。その日は必ずお昼に連れて行ってくれるのですが、泰明庵、一択。そこの冷やし野菜天ぷら蕎麦を注文して待っててくれました。私は、場が引けても、後片付けがあって直ぐに行けなかったんですね。一緒に食べて、タバコの吸える喫茶店に移動して、二人がタバコ吸う間、コーヒーゼリーを食べてました。


ナカジとの思い出、が、止まりません。奥様と娘さんにお手紙を書くつもりです。お二人が知らない、凄く、凄く素敵だったナカジのこと、沢山、言葉にしてお伝えしたい、と、思います。