娘の十三詣の写真を小さな写真集にして家族や、親しい友人に配った。凄く喜んでくれた。
もちろん、アメリカにいるお母さん、Brendaにも。Jimは、白血病で体調が思わしく無い。息子の受験が終わった三月に出来れば家族で会いに行きたいと思っている。家族で、が、叶わなければ、私一人でも。お別れを言いに。お葬式に招ばれて行くのも良いけど、出来れば生きているうちにお別れが言いたい。
JimとBrendaには娘、Lauraが居て20代の頃に絶縁してしまった。かつて、私の親友だった彼女は、全ての縁を断ち切って、私もそれに巻き込まれて、縁を絶たれた。
息子と娘が長いフライトに耐えられる様になった頃、家族でBrendaとJimに会いに行った。それが、8年前。その時、Lauraにも連絡を取った。
長い手紙を書いて、配達証明で送った。ちゃんと届く様に。ポストに入ったままにならない様に。流石に開けて読むくらいは、してくれるだろう。
アメリカに留学して、孤独な私を支えてくれたのは、貴方。ホストファミリーでも、先生でも無く、初日の一時間目に、優しくタイピングの機械の使い方を英語で教えてくれた貴方。
卒業式、私は、学年下だったから、席は離れて居て一緒に式には参加出来なかった。式が終わって、一生懸命、人混みの中に彼女を探した。彼女も同じで、遠くから目が合い、駆け寄って来た時、涙が止まらなくなった。彼女も泣いていた。抱き合って、後、一週間で、離れ離れになってしまう事に思いを巡らせ、思い切り泣いた。
その様子をお母さんのBrendaが周りで沢山撮って居て、私にも送ってくれたし、何年か前のクリスマスには、また、その写真を焼き増ししたのか、裏にこう書いて、送って来てくれた。
私が母親として、貴方たちを
愛していた一番幸せな頃。
絶縁を知っている私には殊更響く。まだ、家にその写真はアルバムに貼ってあり、ボーイフレンドとプロムに行った写真よりも、遥かに愛おしい。
ちょっと話は逸れましたが、、、
私はスペシャルな友達だったはずだから、家族での渡米の際に会いたい、色んな事情は知ってるし、絶縁にまつわる話は、私は立ち入る立場でも無い、ただ、会いたいだけ、と手紙に書いた。貴方が私のヒーローだったから、私の子供達に紹介したいだけ。
しばらく経ってローラからメールが来た。絶縁以来、初めて。
手紙、ありがとう。とても嬉しいです。是非会いましょう。でも一つだけ守ってほしいことがあります。私達に会うことを両親には言わないで。
Brendaの家に行き、全て黙って日本に帰るフリをしながら、ローラに会いに向かう様に、と、頼まれた。Brendaとローラの家は車で五時間くらい、飛行機に乗るにはどの飛行機に乗るかも教えるし、Brendaに会いに行く前に行くしか無いけど、それも経由地は分かるから、ローラに会うことをBrendaに隠し通してアメリカに行くのはとても難しいこと。
何より、そこまでお世話になる人達にそんなウソは付けない。
悩んだ挙句に、
絶対に会った内容や、それ以外のことは話さないけど、会う事実を隠して、と言うのは難しい、と返信した。
彼女の答えは、
私と、Brenda達をどっちを取るの?と言うトーンだった。そう言う問題じゃない、と、説明したけど、メールは一方的にブロックされた。
当時そのことは一切話さずにBrendaとの再開を果たし、2年前くらい、電話で初めて言った。ふと、話す気になったのは、Jimが余命が、と言う話を聞いたから。
そんな事があったのね、相変わらずのローラだわ。本当にごめんなさい。貴方が嫌な思いをする筋は無いのに。
彼女の代わりに謝ってくれたBrendaの声には深い落胆が混じっていた。私は、もしかしたら、ローラとの繋がりを復活させるための、最後のカードと思って居たのかも知れない。
人の縁と言うものは、必ずしも、自分でもコントロール出来るものでは無く、理由も分からず絶たれることもある。例え、死期が近づいていようと娘に一目会うことが叶わない事も。Brendaと話してて、
失敗してごめんなさい。私が最後の砦だったのかもしれないのに。
と思った。
次の渡米。ダメ元でもう一度、会いたい、と、連絡してみようと思う。今回、ローラが、黙っていて、と言うならば、それも出来る。子供達も充分大きいし、無駄なフライトにも耐えられると思う。
何より今の私は、ローラがして欲しかった通りに動くことを、Brenda達へのウソ、とは、思わない、何か違う気持ちがある。歳を重ねて、清濁併せて飲み込む、と言うことを会得したのかな。
人の縁と向き合うのは難しい。ローラに会わないと決めれば、渡米は遥かに楽で楽しい旅行となり、わざわざ、難事を自ら創り出すことをしているけど、
人生は一度きり。
私の気持ちの思うまま、正しいと感じたこと、しなければならない気がすること、を、自己満足のためにやる。後悔しないために。あの時、こうしていれば良かった、と、自分で思わない様に。苦しい縁にも向き合うこと。それが自らの成長になる。
彼女も、歳を重ねて何かしらの違う気持ち持っていて欲しいと思う。。
メールをこれでブロックする、
と、言われた最後に、
東京にずっと貴方のことを思っている友達がいることを忘れないで欲しい。と、締めた。
アメリカではクリスマスに縁が復活することが多い。許しの季節とも言われている。だから、それに向けてもう一度、手紙を書こうと思う。時間をかけて、彼女に響く手紙を。届くのに一週間、クリスマスに考えて欲しいから、到着を11月末と考えると。そろそろ着手だな。。
返信が来なかったらそれまで、だ。でも、やらないと、後悔するから、ただ、自分のためにやるだけ。