昨日、噴水公園の話を書いて、その噴水公園を見下ろすオフィス、当時働いていた会社時代のことを思い出して来ました。
私の部署は立ち上がったばかりで、オフィススペースが無く、人事と言う個人情報を扱う内容から、セキュリティの強い、役員フロアの一画を借りていました。
隣の部屋は、本社のアメリカから派遣されて来たおじさん役員。良くエレベーターで一緒になるとお話する程度でしたが、
僕の部屋は、めちゃくちゃ高層階、夜景が凄いんだよ。
とか、自慢が多くて、感じわりーオヤジだな、と言う印象でした。でも、流石は役員、なんか凄い迫力がある人で、一緒にいるだけで威圧感を感じさせる人でした。
その人の秘書の方とは、同じフロアと言うのもあり、普通に話したり、する程度でした。
ある日、その外国人役員が、一緒になったエレベーターで、
午後、楽しいショーがあるから、楽しみにしてて
と、言いました。
え、どんな?
僕の秘書をクビにするんだよ。
えっ、なんで?
彼女は気に入らない、それだけ。
私は、ポカーンとしながら、席に戻り、上司に報告したかったけど、彼女は会議でいません。
しばらくして、言い争い、の様なものが聞こえたので見に行くと、本当に、彼女は解雇を言い渡されたらしく、
待って、今やってる、この仕事のキリが良いところで。
と、お願いしてましたが、その外国人役員は、警備員を呼んで強引に箱に荷造りさせ、帰らせて行きました。もちろん彼女は号泣です。
当時、私はその会社に入社したばかり、とにかくポカーンとして何も出来なかったけど、急いでフロアの逆側にある人事担当役員の部屋に走ってました。見たままを秘書の人に報告して、
分かりました。伝えておきますね。貴方が目撃者で居てくれた、良かった、解雇の理由はなんであれ、そのやり方は許されないからね。そして直ぐに伝えに来てくれてありがとう。
夜に上司に報告すると、
うん、聞いてる。でも、大丈夫。Nさんが、こんな事、許す訳無いから。
Nさんとは、私が駆け込んだ人事担当役員。全社で憧れの女性でした。いつもネズミ色のパンツスーツ、髪はおかっぱ、お化粧っけはあまりありません。でも、彼女の醸し出す賢さの雰囲気はハンパなく、デキる女性って、着飾らなくても良いんだって良く思いました。
事件から一か月後くらい。Nさんが颯爽と私のデスクの横を通り過ぎて、その外国人役員の部屋の空いているドアをノックしながら、
今、良いかしら?
と、言っているのが聞こえました。恐らくノーアポだったらしく、漏れ聞こえる話は、その外国人が、今はちょっと、とか、断ってた様な。
直ぐにすみますから。
と、Nさんは有無を言わさない雰囲気でツカツカと部屋に入りドアがパタンっと、閉められました。
20分くらいして、その外国人役員と談笑しながら、にこやかに出て来たNさん、通りすがりに、
どう?慣れて来ましたか?
と、わたしにも声を掛けてくれました。入社の際の最終面接でお話して以来、ドギマギしてなんか言ったのかな。覚えていません。
その一週間後、その外国人役員が、今度は、彼が、段ボールに荷物を詰めてました。
Nさんが、あの時、彼にクビを言いに来たんだ〜、確かに凄い戦闘モード醸し出してたもんな〜。アメリカ本社が送り込んで来る役員を追い出すなんて、中々出来ません、しかも本社から来るから、相当、格上の人でしょう。でも、彼女は日本では、人事のトップ、アメリカ式のやり方だか、なんだから知らないけど、あんなやり方で解雇するなんて、彼女が許さなかったのでしょう。理由は関係無いですよね。
ちなみに、その、突然解雇された秘書さんは、会社から長い有給を貰ってお休みした後、元気になり、他の部署で復帰した、と風の噂で聞きました。もちろんNさんの采配でしょう。
この話を巡り、私も解雇の仕方を上司に習いました。
最低、一か月はかけて話すこと、
必ず記録を取って解雇理由となる
仕事ぶりへの警告文を最低三回は、
出すこと。全部Nさんのやり方でした。
決して解雇を全否定している訳では無いのです。
解雇へ至るまでの、公平な手続き、きちんとした記録、そして、その人がやり直すチャンスと時間を与えること、が、Nさんの絶対的な方針、だそうです。まー、でも、お話が始まったら、リカバれる人はいないですよね、そこは厳しい外資系でしたから。
カッコ良い〜✨
その後、私もやむなく解雇の仕事を幾つも経験します。その度に、あのドラマの様なシーンを思い出しつつ、Nさんの颯爽とした姿も思い出してました。そして、彼女の凛とした態度で、最後にその外国人役員と談笑して出て来た姿を思い出し、私も出来るだけ最後まで、ユーモアや、余裕を持って接することを心がけました。そう、クビって言ったって、人生の終わりって訳では無いから。
私は出産を機にこの会社を辞めることになります。雲の上の方だけど、最後はご挨拶の時間を貰いました。
はなさんは、こう言う選択→産休は取らず、退職、されるって方ですよね、大賛成です。素晴らしいお母さんってキャリアを積んで、また、戻って来て下さい。この業界じゃなくても良いんですよ、社会に、ね。
社会人になって相当、ブラックに働いたけど、良かった、と、思えるのはそんな出会いが幾つかあったからかも知れません。ちなみに、Nさんは一人息子さんがいらっしゃいましたが、
どんな人も説得出来るのに、唯一出来ないのが彼❗️
と悩んでいました。今、
ものすごーく
その気持ちが分かりますっ