ばあさんの夜間飛行
最初は浮浪者が入ってきたと思った。もうろうとした頭でここがどこだかわからずに。ここはHISのカウンターだ。海外旅行にはさすがにいけないでしょ。横目でよく見るとばあさんだ。そして浮浪者ではない。「富士そば」のネームの入った汁まみれのエプロンをかけ頭には長手ぬぐいを巻いた背骨の曲がったおばあさんだ。仕事の服装そのままで休憩の時間に迷いこんだのだろうか。どっちにしろ場違いに汚いぞ。ところが。ばあさんは僕の2つ横の席にすっと腰かけてお店の人に言った。「アメリカ。DCまで。帰りはノーフォークで」「ご出発の日程は?」「できるだけ早く」「一番早くても4日の便ですが」「それでいいわ」「ノーフォークはバージニアのノーフォークでよろしいですか」「そう、ノーフォーク」「エスタはご存知ですか」「ええあれ難しいのよね」「今は日本語になってますので簡単に手続きできますよ」「そうなの」と言った調子で頬を紅潮させさっさとチケットを購入し富士そばの店員らしく謙虚なおじぎをしておばあさんは僕より先にお店を出ていったのでした。ちょっと惚れました。no3
1日1時間の真理
デジタルゲームの問題点はただ一つしかないことを確信した。時間を使いすぎる。これだけが問題なのである。それを抜けばゲームとは常に様々なヒントを与えてくれる上質なエンターテイメントである。no3
いつかは勝ちたい
女は一見口喧嘩が上手いように見えるがたいがいの場合は金切り声をあげてすべてをぶち壊して勝ち誇った気になっているのにすぎない。たまに理性的で説得力のある言葉をはくこともあるがそれは大抵いつかの男に言い負かされた経験を利用しているだけだ。その日女が喧嘩に使っていた言葉を注意深く振り返ればかならず前日に男が作り上げ相手を打ち負かした台詞を女はさも自分が作った理屈のように得意げに話していることに気づくはずだ。「ヴィヨンの妻」ぽいイメージno3