バイト先で発作が起きた。
例の、パニック発作というやつだ。

『いらっしゃいませー』 と今にも死にそうな声で言いながら
意識がどんどん遠のいていく。
バックルームに急ぎ、呼吸を整えるが、無理。
そのままふらふらと外に出てタバコに火をつける。
立っていることができず、しゃがみこんでしまった。

自分がしゃがみ込んでいる隣に一匹のクモの死骸があった。

自分も死んだクモと同じだと思った。

他人の目をみてしゃべることすら出来ない自分に
どうして接客業など出来ようか。

『帰りな』
と言われた。

外部との接触を切断された気分だった。
やはり私は「まともな人間」ではないのだろうか。

たまたま起きた発作のせいで、自分が生きている資格などないとさえ

思えた。     いいえ、たまたまなんかじゃない。

自分には何にもできない、のだと。


そう…  私には何にも出来ない。

普通の女の子が、普通に出来ること、が、普通に出来ない。

それが病気なんだと。


帰り道、下を向いて歩いていると、ポタポタと涙が落ちてきた。

自分が普通じゃないんだ、と思った瞬間涙がでてきた。

こころの病気で、薬を飲んでいるということは誰にもいえない。

言ったって分かってもらえないから。 何度もそういう経験はした。

苦しくてにがい経験。  もうそんな思いはしたくない。 もう二度と…


何も言えない。何も見えない、見たくない。何も聞こえない、聞きたくない。

私はこのまま消えてしまいたい…

世間で起きている悲しいニュースも、隣の子猫が死んでしまったことも

私は知らない、知らずにこの世から消えてしまいたい。


隣で寝ていた愛犬チェリーが私に囁く。


「お姉ちゃん、髪型でも変えて、気分転換したら~??」

そうだね、チェリー、、ポジティブにいこうね。

泣いてばっかじゃだめだね。

「消えたいなんていわないよ。あんたと離ればなれはいやだからね。」