「家事」、その意味を単純に調べれば、

 

「家庭生活を営むためのいろいろなしごと。掃除、炊事、洗濯、買い物、育児など。」

 

という説明が一般的で、英語で言うとhouse hold choresとかhousekeeping jobとか言ったりします。で、この言葉の持つイメージを単純に想像すると、なんか特に定義の後半に書かれている「雑用的な実作業」の方の印象を強く受けませんか。単純労働的な。職場でも、細かい雑用のことをhouse keeping jobと言う呼び方をする場面がありました。

 

さて、それでは、主婦/夫(あえて”専業”とはいいません)の仕事は家事ですっていいますけど、そうでしょうか?家事が上でメインと捉えられる雑用というだけの意味であれば、全然そうじゃないですよね。前半に書かれた意味をもっと細かく重く見てほしい。

 

「実作業」はもちろん日々あることで重要だし、大変なことではありますし、それをする自分やしてくれる人の価値を軽んじるわけではありません。でも、それはあくまでもプロセスの最後の部分=「実行(action)」や「実装(implementation)」に過ぎなくて、実際家事というかhousehold thingsの中で一番骨が折れるというか大変だなと思うのは、「情報収集(Research)」と「段取り(planning/ arrangement/ scheduling)」なんだよな、と日々思いながら過ごしています。

 

この中では「市場調査(Market Research)」や「渉外(External Relations)」もしばしば必要です。そして地味にストレスなのが「決断(decision)」。これは性格と場面にもよると思いますが。やることが決まっていたら、あとはやる(&進捗確認)だけですからね。やっている中で想定外の事態にどう対応するか(emergency plan)と言うのはもちろんありますけど。

 

そして当然お金も関わってくるからそこには仕事などでお金を稼いでくる「資金調達(Funding)」だけではなくて、そのお金に関する「会計・経理(accounting)」「財務 (finance)」の仕事もあるし、広い意味での(金融資産だけの話ではない、教育や経験なども含めた)「投資(investment)」のことも考えなくてはならない。

 

そしてしばしば大なり小なり契約することがあるので「法務(legal)」の観点も求められるんですよ。

 

そしてたまには5年先くらいまでの「中期計画(Mid Term Plan)」を立ててみたり。

 

立派な「経営(management)」です。

 

まどろっこしい書き方をしましたが、つまり何が言いたいかというと、「家事」って"Household Managemant"と訳したい。決して雑用仕事だけだと勘違いしないでほしい。

ちょっと大袈裟ではあるかもしれないけど、実際日々の目に見える雑用に近しい実作業の裏には、それくらいたくさんの見えないbackgroundがあるわけです。

 

日々の生活での例は日本でも海外でも枚挙にいとまがないのですが、海外生活だとよりわかりやすい場面が原始的なレベルからたくさんあり、しかも今専業主婦生活をしているのでより意識することもあって、改めてこういうことを考えてみました。

 

例えば、新しい国に来て買い物をどこでするか、何を買うか、郵便局はどこにあるか・信用できるかできないか、子供の保育園や学校はどうするのか、から始まり、病院や習い事の情報を探し、予防接種情報を探し、必要な書類を調べて作って提出して、いろんなことの日程を調整しながらお迎え時間のパズルを組み、それをこなす。などなど。

 

賃貸契約だって、日本と全てが同じではない中で、何が妥当で何がおかしいのかを調べて確認して不当に不利な契約になっていないかとかを確認したり、交渉(negotiation)したりしなくてはなりません。

 

ご飯だってただ作ればいいわけじゃない。お財布の範囲で栄養も考えながら適切な量の買い出しをして、在庫管理をして、その日食べる分のことだけではなく次の日のお弁当のことも考えて作ったりとか。

 

子供だってただ公園に連れて行けばいいだけじゃない。小さいうちは昼寝の時間とかいろんなこと考えて時間を決めたり、起こりうるいろんなことを予想して着替えを持って行ったりお菓子や飲み物を持っていったり、場所を変えてみたりします。事故や事件に対する危機管理も必要です。

 

引っ越しも、ただ箱に詰めるだけじゃない。

処分、譲渡、持ち帰りを仕分けして、日程をうまくみながらいろんな手配や連絡をして、箱のマックス重量を計算してうまく詰めたり、とか。まあこれは今我が家にタイムリー。笑(業者が梱包までする人には関係ないかな)

 

とかとか。

ひとつひとつは軽いこともあるけど、もちろん全部同時進行のマルチタスク。

しかもこれらのほとんどを現地語や英語(レベルが高い時は通訳さんにお願いするけど)でします。実際ブログに書ける範囲のことは軽いですが、中にはかなりヘビーなものもあるわけで。

 

で、このhousehold managementの家庭内での役割分担て、本当に家庭によるし、個人にもよるのですが、結構「実作業」の部分だけやって俺は家事をしている、俺は育児をしているって言う男性も多い(もしくは、多かった)のではないかな、と思います。若い世代ほどそうじゃなくなりつつあるのかもしれない?とも思ったり期待したりはするものの。

 

例えば共働きで両方がフルタイムで働いていてたとして、稼ぎも同等もしくは女性の方が稼いでいるなんてケースも巷にはたくさんあるわけですが、なぜか家庭生活となると保育園や病院、習い事関連のmanagementなどは女性任せの家庭の方がまだまだ多いと思います(ゼロとは言いません)。送り迎えや薬を飲ませるなどの「実作業」はしてくれていても、そこに至るまでの情報収集をして決めて段取りを組んだうえで実行する、ところまできちんと分担してくれている男性、たくさんいると言う印象は個人的にはありません(あくまでも個人の友人知人ネットワークで感じる感想です)。もちろん、実作業を分担してくれてとてもありがたく感じることは日々あるでしょう。(いろんな個別事情を考慮した上で可能な範囲でも「実作業」すらしてくれない人は私としては論外)。

 

でも、上に書いたように、家事=家庭経営の要素って仕事をしている時と全てとは言わないまでも結構同じ部分があると思うのに、職場でもそういう観点を持ちながら仕事をしているはずの男性が家庭生活においてはそれを発揮できなくなる(しなくなる)のはなぜなんでしょう。それはもう当事者意識(mindset)と責任感の問題かもしれません。

 

偏りが起こる理由ひとつとして、専業主婦/夫か、共働きか、という要素はかなり大きいと思いますが、それでも仕事をしてお金を稼いでいる(資金調達/funding)のだから他のことは全部やってくれて当然、というのはやはり違う気がします。価値観によって考え方は分かれるかもしれませんが。少なくともfunding以外の家庭経営をほとんど全てもう片方の人にしてもらっているのであれば、その点についてはリスペクトしてほしいですね。

 

他に、上で挙げたさまざまな経営的要素の得意不得意という面もある(reserchは得意だけどnegotiationやdecisionはできないとか、implementationはできるけどfinance/accouting/legalの観点で色々管理するのは無理、とか)ので正解の形はそれぞれの家庭によって違うのは言わずもがなではあるのですが、なんとなくいろんな負担が特に共働きの場合女性に偏っているんじゃないかと言われる所以は、結構根深くて、やっぱり家庭労働が雑用だと思われてるから、という点にあるのかな〜なんて思います。

 

で、今日のもう一つの結論は、駐在帯同をしていて働けない女性や男性の中には外で働いていないこと(=お金を稼いでいないこと)や専業主婦/夫生活をしていることになんとなくモヤモヤしている人もいると思うのですが、海外の地で家庭の経営に携わっていることだけでも全く引け目を感じることはないんじゃないかな、と思います、というお話です。私はもうその点には全くモヤモヤしておらず、生活を回していろんなことをよりよく進めるためにこれだけいろんな要素を日々こなしていると思うだけで自分を褒めたいと思います。現在はお金をひとりで稼いでくれている夫には感謝はあれど、負い目は感じません。笑

 

同時に、もうすぐ共働き生活に戻るにあたってはミラノで生活していた時ほど全部のことはできなくなるので今後その分担どうなるんだろ?と色々不安もありますが、またこれから生活状況とか得意不得意に応じてまあなんとかなるようになるでしょう。

 

仕事と絡めて考えたら英単語だらけになり鬱陶しかったかもしれませんが、数年間の専業主婦生活を振り返って感じたことでした。


写真は夜景。