濁り始める五月に手を差し入れ

六月を掬い取る


倒錯する夜は白薔薇の土の下

甘美な悪夢に魘された三日三晩

月を齧った野鼠が火衣を纏う


俄かにパッと散り敷いて

花弁は川面を流れてゆく


漱がれた金属が僅かに発光する


列んだ石像があり

苔生した道に踏み込む

同じ顔が延々と続く


捜しているものに向かって

嗅覚が先走ってゆく


注がれた器に宿った精霊を揺する


籠の中で半透明に透き通る色彩

手に触れると結晶化し

月明かりの下でそれは孵化する


早朝、馨だけ残して

精霊は去ってゆく

乾涸びた石膏から水分は閉じた


浮き彫りにされた顔は

行列には無かったものだ


滑らかな孤独を舐めた舌が

根となり繊毛を生やす

すべての根源を遡る


繋がりはまだ途切れずに

予感が心電図を真似て脈打つ