鯉幟が夜を泳いでいる

空洞は何を隠すのか

そっと中身を覗いてみれば

闇ばかりが立ち籠めて居る


水滴 滴る 音」


肌寒い大樹の下で

皮膚は鳥肌を立てる

(未だ 人で あるが故に)

声は耳から脳へ

侵食してゆく


液体 啜る 音」


鯉幟の尾鰭が翻る

地面から白い腕が伸びてきて

鯉の口へと這ってゆく

飲み込んで 呑み込んで 腕が

白い 長い 腕が 鯉の胎内で

静かに脈動するものだから

産まれてしまう


「期待は膨らんで 弾けて 萎む」

(針先で突いて破裂する)


正面から見る後ろは

背中に生える鱗が聳え立ち

そろそろ門を越えてゆく

獣は溜飲し逆立つ喉元

荒々しく渦巻いて起立する










抜け殻の鯉幟が地面に落ちている

中身の事は終ぞ知る由もなく