彼がいつからそんなことを考えていたのか。
一ヶ月前?一週間前?それとも思いつき?
どれにしろ、私は全く気づかなかった。
「別れたい」
彼がそういいだしたのは、いつもの週末の夜。
いつものように待ち合わせ、いつものようにご飯を食べ。
いつものように部屋に行き、いつものようにセックスをした後だった。
この後いつもなら、けだるい余韻の中、何となくお互いの一週間を話している時間だった。
寝耳に水とはこのことだ。一気に目が覚めた。
最初は理解できていなかった。今そんなことを話す時間じゃないだろうって思ってた。
でも沈黙が私に分らせてくれた。頭がガンガンする。
「何で・・・。」
そんな言葉しかでないのかと、言った直後に後悔した。
でも今の私にはそれが精一杯だった。
「先のことを考えられないんだ、佐代子だと」
彼は私の目を見ず、部屋の隅を見つめたまま、ようやく聞こえる声でつぶやいた。
また沈黙がきて、彼は押されるように言葉を繋いだ。
「佐代子が悪いんじゃないから。俺自身の問題だから」
彼は相変わらず目を合わせない。
だんだん怒りがわいてきた。
具体的な理由もなく彼は別れようと言うのだ。自分が悪いのだとかそんなの言い訳にしか聞こえな
い。
「いつからそう思ってたの?」
多分声が怒っていたのを感じたのだろう。もう聞こえない様な声で「三ヶ月前」と彼は答えた。
三ヶ月。その間私は彼と何度会っただろう。何度セックスした?
それでも気付かなかったとは。
自分自身にあきれる気持ちと、なぜ今まで言わなかったのかという気持ち。
「そんなに前から・・・。」
そこでまたあることに気付いた。
「じゃあ何で今日したの?別れるつもりだったんでしょ?」
彼は思いも寄らない答えを返してきた。
「佐代子がかわいそうだったから。ただ別れるって言うのは。」
彼は私を哀れんでいた。そう、私は彼に哀れまれていたのだ。
別れるとかいうより、そのことが一番堪えた。
「あんたに哀れまれるほど、私は落ちぶれてない!」
怒りに任せて、彼に怒鳴った。
彼は相変わらず目も合わせず、
「そういうところが嫌なんだよ」と吐き捨てた。
そうか。彼はかわいい女の子が好きだったのか。
それが分ればここにいる必要はない。さっさと服を着込み、そのまま部屋を出た。
帰り道。この数年間を振り返り、ふと考えた。
泣いてすがれば良かったのか。
考えて思った。そんなこと出来てれば、こんなことにはなってないんだ。