フィリピン・マニラにはスモーキーマウンテンと呼ばれる場所があります。
スモーキーマウンテンとは?
フィリピン・マニラの北方に位置するスラム街。
ゴミの山が自然発火し、煙が立つようすから、スモーキーマウンテンと名付けられました。
かつては漁村でしたが、1954年〜ゴミの投棄場となりマニラ市内から大量のゴミが運ばれてくるようになります。
そのゴミ山の中から金目のものを探し、わずかな日銭稼ぎをする貧民が増えたことで、スラム化しました。
しかし国のイメージが損なわれるとのことで、1994年に閉鎖し住民は退去。
一部の住民は別のゴミ投棄場に移り、ウェストピッカー(途上国において、ゴミ廃棄場から金目のものを収集する人のこと)として生活を続けました。
スモーキーマウンテンに行こうと思ったきっかけ
なぜスモーキーマウンテンの存在を知っていたかというと、昔『世界がもし100人の村だったら』という番組でスモーキーマウンテンが取り上げられていたからです。
ゴミ山に登り、ゴミを収集している幼い女の子が映し出されており「フィリピンにはこんな場所で暮らす子供がいるのか」とかなりの衝撃を受けたため、大人になってもまだ覚えていました。
せっかくマニラに来たのだから、子供の頃にテレビでみたあの場所を、自分の目で見てみたいと思ったのです。
その時一緒にいた旅仲間も皆スモーキーマウンテンの存在を知っていたため、全員の意見が一致し、向かうことになりました。
スモーキーマウンテンへの行き方
行き方…と大層に説明するほどでもないのですが、私たちはタクシーで向かいました。
『スモーキーマウンテンに行きたいです』
とタクシーの運転手に伝えると
🚕「え?なんで?」
と、すごく不思議そうな様子。
スモーキーマウンテンに興味があり、どのような場所なのか自分の目でみてみたいと伝えると、
🚕「行くのはいいけど、危険なことがあるかもしれないよ?気をつけなきなダメだよ!」
と、かなり心配されましたが、スモーキーマウンテンには行けることになりました。
スモーキーマウンテンに到着
スモーキーマウンテンは閉鎖されており、私たちのような観光客が自由に出入りできる雰囲気ではありません。
タクシーの運転手(以下: ウンちゃん)が、現地スタッフの元へ案内してくれました。
ウンちゃんがスタッフに、私たちがなぜここに来たかを説明してくれたおかげで、すぐに話が通り、さっそく案内してもらえることに。
見学料として1人300ペソ支払いました。
ゴミ山の跡地には草がおい茂っていました。
テレビでみた、あのゴミ山はありません。
(今は許可を得た人しかゴミ収集ができないようなので、私たちの見学コースに入っていなかっただけかも)
スモーキーマウンテンについて調べると、
強烈な臭い
悪臭
吐き気が〜
などと表現されている方もいたのですが、私たちが見学した場所に限っては、そのような臭いはしませんでした。
(ゴミが集中する場所ではまた状況が違うのかもしれませんが。)
ただしまったくゴミがない訳ではなく、良い環境と呼ぶには程遠いです。
子供が育つ環境としては劣悪だけど、その選択しかなかった方たちが集まっているのでしょう。
そして1番びっくりしたのが、スマホを使っている人がいたこと。
私の中では、テレビで見たスモーキーマウンテンの世界が全てだったので、ライフラインが整い(脆弱ではありますが)、携帯電話まで普及していることに驚きました。
⚠︎スモーキーマウンテン内でも収入差はあるし、すべての人が手にしている訳ではありません。
ここで暮らすって、ちょっと想像できない……。
ウンちゃんは【危ない場所】と言っていたけれど、ここで出会った方たちは、底抜けに明るい笑顔を私たちに向けてくれました。
その表情を見ていると、一瞬ここがスラムであることを忘れそうになります。
ですが冷静になって目を向けると、目の前にはボロボロの洋服を着た子供が、今にも切れそうなサンダルを履いており、中には泥まみれになってスッポンポンで歩いている子さえいました。
その光景が、一気に現実世界へと引き戻します。
遠くの方にマニラ市内の高層ビル群が見えます。
子供たちはどのような思いでこの景色を見ているのだろうか。
同じマニラ市内、車でたった20分ほどの距離なのに、なぜここまでもの格差が生まれているのか。
今ではNGOなどの支援があり、学校に通える子もいるそうです。
ここで生まれ育った人もいれば、こういう場所だと分かりながらもここで生きていくしか術がなく、移り住んできた人もいるのだとか。
十分な教育が受けられ、たとえスラムに生まれ育っても、誰もが自分のやりたいことに挑戦できる環境が整えば良いのですが……。
私は子供たちのあのキラキラした目が忘れられません。
どこで生まれようが、全ての人にチャンスが与えられる世の中であってほしい。
何の希望もない人生を、あの子たちに歩んでほしくない。
ここにいれば支援によって、なんとか生きてはいけます。
でも支援頼みでは、その支援が途絶えた時、さらなる困難が待ち構えていることは容易に想像できます。
個人というよりも、国レベルで政策を打ち出さなければ、根本的な解決にはならないかもしれません。
私にできることといえば、わずかな支援くらいでしょうか?
ここにいる子供たちへの直接的な介入ではないけれど、私は子供たちに、さまざまな選択肢を与えてあげられる、そんな存在の大人でいたいと強く思います。
人生楽しくない・刺激がない・退屈
なんてのは、裕福で物に溢れた日本で生まれ育ったからこその悩みなんだなと気付きました。
私は自分の頑張りしだいでなんにでもなれる。
楽しくない。退屈。なんて思っている暇があれば、何かにチャレンジし続ける人生でありたい!…そんな風にも思いました。
反省点
今になって思うのですが、この時は突発的に行動しすぎたなと反省しています。
今回は旅仲間4人で行ったということもあり、危機感が薄れてしまっていましたが、スラム街という治安の悪い地域に、何のアポもなしに訪れたのは失敗でした。
たまたま面倒見の良い運ちゃんに出会えたことや、スタッフの方の手があいていたこともあり、案内してもらえました。
ですが突撃訪問は相手方に迷惑をかける可能性もあるので、事前にツアーに申し込んでおくのが正解だったと感じています。
今回は出会った住人の方が皆フレンドリーだったのもラッキーで、本当に危険な場所では何が起きるか分からないので、危機管理は徹底して行うことが大切ですね。
⚠︎スモーキーマウンテンを訪れたのは、今から7〜8年前のことです。
ほにゃ✋
■NGO(non-governmental organizations)⇨「非政府組織」
もともとは国連の場で政府以外の関係組織を示すのに使われていた言葉が広まったもの。最近では、開発、貧困、平和、人道、環境等の地球規模の問題に自発的に取り組む非政府・非営利組織を指す場合に使われる。現在、国際協力活動に取り組んでいる日本のNGOの数は、400団体以上。
■NPO(Nonprofit Organization)⇨『非営利組織』
NGO、NPOともに市民が主体となり営利を目的とせず。課題を解決したり、よりよい社会をつくる活動を行う団体のこと。
日本では,海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO,国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にあるよう。
非営利とは、利益を出さないという意味ではなく、『利益があがっても構成員に分配せず、団体の活動費に充てること』を指す。
■JICA (Japan International Cooperation Agency)⇨『独立行政法人国際協力機構』
JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っている。