パロディ?オマージュ?日本の伝統である本歌取り?
シェークスピアの作品を日本の江戸時代の話にするという発想自体が驚きで、
それが見事に成功しているところに井上ひさしさんの遊び心と天才性を感じます。
以下、ネタバレです!!ご注意ください!!
まずは隊長の木場勝巳さんが登場して観客に語りかけ、一気に”天保十二年”に引き込み、
アンサンブルの皆さんの「もしもシェイクスピアがいなかったら」の歌詞にうんうん、と納得していると、
高橋一生さんの佐渡の三世次、登場・・・身体的特徴からリチャード三世だな、とわかるけれど、他の作品の登場人物の要素もある?
ヤクザの抗争を利用してのしあがろうとしている・・・?
まずは「リア王」の世界・・・年取った親分?が、3人の娘の愛情を試して相続問題・・・
唯月ふうかちゃん演じるお光がコーデリアで、元の話同様、家を出ていき、
姉2人(樹里咲穂さん演じるお文と土井ケイトさん演じるお里)が残った・・・と思ったら、あれ?
お文の家は弟が兄を殺して、ハムレットの世界・・・
お里の家は家臣が主人を殺して、マクベスの世界・・・
ハムレットに相当するのは浦井健治くん=きじるしの王次。
開演から健ちゃん登場まで、かなり時間がかかったけれど、出た途端に華やかになるのは、やはりミュージカル俳優・・・
オフェーリアに相当するのは熊谷彩春ちゃん演じるお冬・・・オフェーリア同様、気がふれて歌う場面があるけど、本当に歌上手くて感動!
まだ19歳のはずなのに、末恐ろしいというか楽しみというか・・・
そして、ハムレットだと思っていた健ちゃん、なぜか途中からロミオに!?
ふうかちゃんお文が敵対するお里側についていて、敵である健ちゃんのきじるしの王次と一目惚れで恋に落ちる・・・
このお文は殺陣もあって、なかなかに男前でカッコよく、そうだ、ふうかちゃんはピーターパンだったよねー・・・と思ったら、きじるしの王次相手のときはデレデレになってバカップル誕生。
さらに話を複雑にするのは、このお文には双子の妹、おさちがいて、代官の奥方になっているということで、この元ネタは「間違いの喜劇」だね(「十二夜」っぽくもあったけど、ラストでまだ「十二夜」は出てなかったと隊長が言ったし)?
双子ものにありがちな、人違い、勘違いで振り回される人々・・・ふうかちゃんの早替えと、演技の切り替えが素晴らしい。
そうこうしているうちに、ハムレットの世界の人たち、皆亡くなった?
健ちゃん、登場遅かったけど、退場は早っ!集中的に大活躍して去って行きました(後にもう一役やったかな?)。
あと、なぜかロミオとジュリエットがもう一組。
木内健人くん演じる佐吉と、熊谷彩春ちゃん演じる浮舟大夫が墓地で死んでしまう展開・・・は、必要だったのかな?
お里の家は、マクベスだと思っていたら、いつの間にか夫、幕兵衛が嫉妬を煽られる展開で・・・これは「オセロ」?
悲劇の裏には、梅沢昌代さん演じる老婆=マクベスの魔女的存在がいて、
野心に満ち満ちた佐渡の三世次(高橋一生くん)が常に暗躍。
三世次は全てを手に入れ・・・でも、おさち(ふうかちゃん二役)への想いは遂げられず・・・だった(あまりに複雑な話で、この辺うろ覚え)?
ラストはリチャード三世と同様の運命をたどり、滅びていく・・・・
ストーリーを追いつつ、あ、これはシェークスピアの〇〇!とか、〇〇のセリフ!とか思い出しながらの観劇が、なかなか楽しかったです。
私が気づかなかった部分もたくさんある(むしろ、その方が多い?)と思うので、ブルーレイを購入して確認するべきか?