昨年、次男と生のパフォーマンス「クーザ」を観に行ったシルク・ドゥ・ソレイユの舞台が3D技術で映像化と聞き、さっそく次男を誘って観に行きました。


STORY

ふらり田舎町に辿り着いた足取りの重いミア(エリカ・リンツ)は、ピエロに渡されたチラシに導かれ、サーカスが行われるテントへと向かう。やがて空中ブランコを行う寸前の一人の青年(イゴール・ザリポフ)がチラシに載っていた人物であることに気付き、ミアは彼をじっと見つめる。空中ブランコの青年も見つめ返し、二人が互いに目を離さずにいると、青年はブランコを握り損ねて落下してしまう。驚いたミアは彼を助けようと駆け寄るが、青年は地面に飲み込まれるように姿を消し、追うミアも消えてしまう。やがて彼女は、見たことのない不思議な世界で目を覚まし、その異世界をさまよい歩きながら、消えた運命の青年を探し求めるのだった……。

ヒロインのミアが、消えた空中ブランコ乗りの青年を探し求める物語。白ウサギを追って知らない世界に迷い込む「不思議の国のアリス」や、青い鳥を探し求める「青い鳥」のような話?ミアが迷い込み、さまよう世界が「シルク・ドゥ・ソレイユ」の「O(オー)」、「KA」、「LOVE」など、実際にラスベガスで上演中のパフォーマンスの世界です(上演中のパフォーマンスと全く同じなのか、映画用のアレンジがあるかはわかりませんが)。



まずやや残念な感想になりますが、やっぱりパフォーマンスは生で観るものだよなぁ・・・と思いました。人間技とは思えないような動き、パフォーマンスの連続なのですが、映画ならば、CGや特撮で表現できることなので、なんだか普通にアクション映画を見ているような気分になってしまって生舞台のドキドキ感がない(頭の中で何度も、これは何の仕掛けもなく人間がやってるのよ、凄いのよって自分に言い聞かせながら観ていたけど)。生であれば、どんなプロフェッショナルなパフォーマーでも失敗の可能性はゼロではなく、常に危険と隣り合わせのスリルがあるのだけれど、フィルムにおさめられている映像なら、絶対に失敗はないはず・・・と安心してしまって緊張感が持続できないのかな?そのせいか、「クーザ」には大興奮だった次男は、早くから退屈しはじめて、「まだ終わらないのー?」って何度も訊かれてしまったあせる途中、ピエロの衣装に火がついたり・・・という演技も、おそらく同じ会場にいたら、もし、火が燃え広がったら・・・なんて危機感もあると思うのだけれど、スクリーンの向こうのことと思うとねぇ。息をのんだり、思わず叫んだり、拍手という形で参加したり・・・そういうライブ感って大切なんだなーと再認識しました。まあ、ある意味良かったかな?映像3Dで生の舞台と同じものが表現できるようになったら、ライブ・ステージの存在意義がなくなってしまうもの。



けれども映画ならでは、映像でなければ表せない素晴らしさもありました(これは、子どもには感じられなかったと思うけど)。芸術作品と呼べるほどの映像美!IMAXの3Dで、水しぶき、スモーク、ドレープ、炎などが迫ってくるよう。アクロバティックなパフォーマンスを決して生では見られないような角度(上からとか)や、アップで見られて大迫力でした。



そして、映画だからこその物語性。ラスト、長い旅の果てにミアと空中ブランコ乗りの青年とが巡り合ったとき、2人の喜びと深まる愛がエアリアル・パフォーマンス(たぶんティッシューって呼ぶのかな?)に昇華していきます。空から降りている細長い布をつかんで空中を舞う2人の表情と動きの素晴らしさは、まさしく愛のデュエット!過去一度も観たことのない美しいラブシーンだと思いました。私は、この場面を観るために今日、映画館に足を運んだんだ・・・と思ったくらい。この場面が観られただけで十二分に満足でした。



この映画を観るとラスベガスに行って生のパフォーマンスが観たいなあ・・・と思ってしまいますね。海外では簡単には行けず、実現は難しいです。日本でも舞浜にシルク・ドゥ・ソレイユの常設劇場を建てて10年間の公演が予定されていたZEDという舞台があったのですが、昨年の震災後、客足が落ちたために3年で打ち切りになったそうです。何とか、この映画の公開まで持ちこたえていれば、多くの人が足を運んだかもしれないのになぁ・・・。