昔、親戚の集まりで叔父が話していた。
「よめごを大事にせな一家離散。今どきのジジババは心得とる」と。
役場を定年退職してから、畑仕事と料理と孫の世話に生き甲斐を見出し、会えば必ず自分が漬けた漬物だなんだと沢山持たせてくれる叔父。
そんなおじいちゃんの孫たちは、平成生まれなのにおやつにおじいちゃんが作った芋もちや梅干しや栗の渋皮煮などのシブい食べ物をリクエストする。
おばあちゃんはまだ現役で働いていて、大きめの個人病院の事務長さんをやっているのだが、男みたいにサッパリした性格で息子夫婦にはあまり干渉しない。
息子たちもいい大人なんだから放っときゃいんじゃない、といった風だ。
日頃から嫁を大事にしているから、お嫁さんが残業で遅くなる時などに「お義父さん子供の保育園のお迎えお願い!」とよく頼んでくれるのだと叔父は得意気に言う。
自分は夕方いつお迎えを頼まれてもいいよう、子供たちのおやつを常備して時間を空けているのだとほろ酔いで満面の笑みを浮かべながら話していた。
よめごの言う事をよく聞いて、食べさせてはいけないものは怒られるから絶対に食べさせない。
欲しがるからといって何でも物を買い与えるとお嫁さんに怒られるので孫を説得するのが一苦労だ。
洋服はデザインやメーカーや素材に拘りがあるようだから、支払いの時だけ呼ばれる。
そうやって嫁の言う事をよく聞いているから、孫にたくさん会わせてもらえるんだと冗談っぽく言っていた。
賢い人は馬鹿になれる。
賢い人は心得ているのだ。
程度の悪い人間が暇を持て余すとロクな事がない。
自分を含めて。