今日(正確には昨日)の21時すぎ頃の事。
2階に居る耳が遠い舅の部屋でベルが鳴る。
鳴らしているのは1階のリビングの隣の部屋に居る姑だ。
私と夫がお風呂に入ろうと1階に降りてきてすぐの事だった。
舅が2階から降りてくると、TVで見る毒を飲んだ人のように畳の上に倒れ込みもがき苦しむ姑が居た。
胃と腸が痛い...
足が...アチコチがしびれる
袋に入ったお薬を...
と不調を訴え、体を『く』の字に曲げ足をピクつかせながら、姑は髪を振り乱しお産で息んでいる人のように息が荒く唸り声をあげていた。
舅が娘に洗面器を用意するよう頼み、姑はその中に長い事顔をうずめて少しだけ吐いた。
舅も姑も病院へは行かなくていい、たまにこうなるんだ、時間が経てば治るからと病院行きを勧めても拒んだが、夫が無理矢理抱きかかえて姑を車に載せ、近所の国立病院の夜間外来に向かった。
車に乗ってもまだかすれ声で大丈夫だから病院はもう行かなくていいからと言い続ける。
病院が近付くにつれ、くの字の体も起きてきて、ハッキリとした口調でもう帰ろうと言うようになった。
夜なので病院までは車で10分もかからない。
その僅かな時間に驚異的な回復力をみせ、みるみる普通の姑に戻っていった。
夫が抱きかかえて車に載せたので履物が無く、病院に着いたらすぐに入口で車いすを借りて、それに嫌がる姑を載せ夜間の窓口へ向かった。
受付を済ませるとすぐに看護師さんが来てくれ、どんな症状か確認させてくれと言う。
姑:『あの...えっと、、、、コーラック飲んでます』
看護師:『えっ??どんな具合かを聞かせてもらっていいですか?』
姑:『3ヶ月に1回くらい、こないなるんです。もう大丈夫ですのですみません。』
看護師:『えっと、どこか悪いから来られたんですよね、痛いとか...』
私:『胃と腸が痛いみたいで、少し吐きました』
看護師:『痛みが出たのは何時頃ですか?コーラックを飲んだのは何時頃ですか?』
姑:『痛みは21時頃で、コーラックは食前に2錠...』
看護師:『食前?!あれは夜寝る前とかにたっぷりのお水と一緒に飲むんですよ!そんな飲み方したらだめですよ!!』
姑:『いつもそれで大丈夫なんです。今日だけ、たまーにこないなるんです。なのでもう診察は結構です。ホンマすみません。』
看護師:『念の為診たほうがよくないですか?』
姑:『ホントに大丈夫です。またちゃんと検査に来ますので。今日はもうすみません結構です。』
こんなやり取りをして、診察代も払う事なく、駐車券の割引だけはしっかりしてもらって、元気なオランウータンを車いすに載せて病院をあとにする事となる。
看護師さんも苦笑い。
待合室で一部始終を見ていた他の患者さんやそのご家族からの冷やかな視線を浴びながら、『お騒がせしてすみませんでした』と私は頭を下げた。
姑もバツが悪そうに少し笑いながら、車いすは恥ずかしいから歩くと言う。
こんな茶番を何の為にやるのだろう?
コーラック2錠で足やアチコチがしびれる??
原因がコーラックだと分かってるなら病院に着く前に言え。このホラ吹きが。
まさか私たち夫婦が来たのを一度トイレに行くフリをしながら確認して騒ぎ出したんじゃないのか??
吐くまで随分時間がかかっていたが、リアリティを出すために吐こうと頑張っていたんじゃないのか??
コーラックで具合が悪いのになぜ血圧の薬を飲んだんだ??
一瞬で矛盾点や妙な偶然が頭をかけめぐる。
ほんの20分前にのたうちまわっていた姑の姿や、嘔吐物の片付けをした事を思い出し『でもホンマに健康診断で血便でアタシひっかかってんねんで。』などと懲りもせずほざく姑を、なんて気色の悪い人なんだろうと心底思った。