夜になり、家の中から先輩が出てきた。暗くてよく見えないけれど、わたしのよく知る女の子と先輩が腕を組んで歩いているように見える。
『愛してる』
それは、わたしに向けて言っていた言葉じゃなかったんだろうか。
先輩にそれを聞いたとしても、いまさらなんの意味もないような気がした。二人がわたしに気づく前に、力なくぶらさげたバッグを握り返すと、とぼとぼと路頭を迷うようにして家へと帰る。ちかちかと壊れかけて点滅している街灯がわたし照らし、いっそう惨めに思えた。
ふいにわたしの横を車が通りすぎていく。それをかすんだ目で見送りながら、バッグの中から携帯を取り出し、最後のメールを先輩へと送る。
今日は家族がいません。家で料理を作って待っているので、よかったら来てください。
『愛してました』
暗闇の中で光る携帯の画面を、わたしは自嘲ぎみに笑い見つめる。
先輩が来てくれたら嬉しい、そう思いながらも来て欲しくないとも思った。どちらにせよ、わたしはもう何もかもが嫌になったんだ。
気づけば自分の家についていた。中は真っ暗で、電気をつける気にもならない。真っ暗な道を歩いて慣れた目で台所まで歩くと、調理場に置いてある包丁を手にした。
もう元には戻らない、そんな気がした。
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反省会へジャンピング★