「医療通訳」に潜むリスク | 100万人の中国語 

100万人の中国語 

田中則明(たなかのりあき)
小田原在住。中国語研究家。

中国語の二つの壁:「四声」と「日本語にない母音子音」

『これ以上解り易く出来ない!中国語』
『”核文字”で もやもやすっきり 中国語文法』
『”核文字”で 中国語文法 総仕上げ』

最近、日本に治療目的で来る外国人が

増えている。


そのために、病院では、医療通訳が必要

となって来ているらしい。


今朝の日経に、

電話で医療通訳提供

に関する記事が載っていたが、私は、

ぞっとするような寒気を覚えた。


なぜ?


理由は、簡単。


誤訳のリスク

があるから、しかも、そのリスクは、

もしかしたら、測り知れないようなもの

になると思うからだ。


「熱は、何度ですか?」

「カルテは、お持ちですか?」

「薬は、飲んでいますか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

位だったら、まず、誤訳も起きないだろう。


けれども、

「胸のあたりが、何となく重苦しいような、

 締め付けられるような感じで、特に、

 朝方は、水中で息ができないので

 もがき苦しんでいるようなそういった

 感じがあり、起き出してから30分

 位は、ベッドに腰を掛けたまま動くこと

 さえできずに、全身を覆う脱力感に

 さいなまれながら、何とか生きている

 といった感じで、これでは死んだ方が

 ましだと思うようになりました、もし、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

というような内容だったら、どうするか?


日本のお医者さんと海外から見えた患者

さんが、どうやって、正確にコミュニケー

ションを図るか?


同じ日本人同士でも、最近、医療現場での

大きな事故が報告されている。

下手をすれば、莫大な額の訴訟問題に、

ひいては外交問題に発展しかねないだろう。


勿論、この方面にビジネスを手掛ける人は、

リスクを最小限に抑えようとするだろうが、

それでも、以下に述べる私の危惧に対して、

対策はあるのだろうか?


誤訳を、どう防ぐか?


 通訳というのは、通訳一人一人の力量に

 かかっており、個人間の能力差が大きい。

 

 医療のような複雑な分野では、極めて

 有能な通訳でさえも、誤訳を冒す危険性

 がある。


 それを、どうやって防ぐ?



誤訳の責任をだれが取るか?


 誤訳 ⇒ 誤った処方 ⇒ 死亡


 が起きてしまった場合、誰が損害賠償

 の責を負うのか?


 病院、医者は、自分の責任ではないと

 主張するだろう。


 その意味において、通訳、通訳派遣会社

 の責任は極めて重い。



理想は、お医者さん自身が、外国語に

精通することだが、それは、無いものねだり、

と言うべきか。