以前の僕は、宮崎駿のことをまだお金世界に降りてきている人だと思っていた。
何の話かと思われたでしょうか?(笑)

僕はスタジオジブリの作品、中でも宮崎駿の作品はどれも好きで何度も観ています。毎回見るたびに感想が違う、湧き出てくるものが違うのは彼の作品が主です。彼は世にも稀な非言語情報の操作能力が突出している人間です。だからこそ、絵で表現する力が物凄いわけですが、非言語情報の世界に臨場感を感じているからこそ逆説的に言語情報のアウトプット力も抜きん出ているのだと思います。実際、彼の言うことは一々名言ですし、考えさせられます。この前、NHKでやっていたドキュメンタリーを見てそう思いました。

そんな彼ですが、今でこそ知らない人はいませんし天才と称されていますが、ナウシカの制作当時は一般の人には全くと言っていいほど知られていませんでした。アニメーター業界ではかなり有名だったもののやはりまだマイナーな知名度の存在だったのです。ナウシカ制作時は43歳ですが、じゃあ宮崎駿はその頃はまだそんなに実力はなかったのかというとそんなことはないと思います。戦後の厳しい時代を生き抜き、父親が軍需産業でお金を得ていたという複雑な環境もあって、若かりし頃から自身の哲学や考え方は深めていたでしょう。家にゼロ戦があったそうです。彼はもちろん戦争反対者・平和主義者で有名ですが、その反面彼の漫画、ラピュタ、ナウシカ、紅の豚、風立ちぬ、などの作品からも分かるようにかなり飛行機関係・戦闘機に関しては専門家顔負けの知識量があります。戦争反対と言いながらも、兵器は大好き人間という矛盾を抱え込んでいる人間が宮崎駿なのです。そして、そんな矛盾を抱え込んだ人間がどうして生まれたんだろうという事に答えた作品が鈴木敏夫曰く『風立ちぬ』だそうです。そうやって見ると面白いですね。飛行機関係や戦闘機などの知識を時代背景・歴史もしっかり学びながらもう一度観てみると作品の深みが分かるかもしれませんよ。。

宮崎駿はもともとは東映アニメーションに入社して、その後高畑勲と出会い、切磋琢磨します。




この動画を見ると、高畑勲と宮崎駿の出会いがその場で起こったかのように分かりますね。彼の言葉の表現力は凄まじいものがあります。彼のように美しい詩的な表現を操れる人間になりたいですね。

そして、彼ら二人は現場の制約が多いことによる力を思う存分発揮しきれていないことで満足できず、東映アニメーションを出てその後「トップクラフト」という会社に移ります。そこで『風の谷のナウシカ』を作ります。鈴木敏夫とは『風の谷のナウシカ』から一緒に今まで仕事をしてきたわけですが、彼を一躍有名にして今の地位を築き上げたのには鈴木敏夫と高畑勲のおかげが大きいんですね。

宮崎駿は知識ももちろんですが、やはり想像力で知識を包み込む・超越してしまう才能が抜きん出ているものがあります。そして、その一方高畑勲は圧倒的な教養の持ち主で(当時の東大出身なのはスゴイこと!!!)、リアルをかなり追究する人です。どっちもスゴイですが、やはりベクトルが完全に違います。宮崎駿は圧倒的な超人的想像力で世界を包み込み普遍的な作品たらしめてエンターテイメント性と芸術性を両立してきましたが、その一方高畑勲は理屈っぽい人で実際にどうやって現実世界で動くのだろうかということを意識しながら作品作りに望んでいると考えられます。その証拠に瓜と包丁を実際に用意してどうやって切れるのかを検証したりとかしています。




これがその動画です。徹底したリアルの追究ですね。そんなことしてるから『かぐや姫の物語』の制作に13年もかかるんだろうとは思いますけどww

そんな高畑勲が鈴木敏夫に色んなことを教え込み、久石譲と宮崎駿を出会わせて不世出ともいえるありえない次元の巨人の掛け算を生み出し、スタジオジブリの立ち上げも貢献しました。ジブリがなくても、何らかの形で以後宮崎駿はその才覚を表したかもしれませんが、高畑勲がなければ今の地位のスタジオジブリはなかったでしょう。ただ、スタジオジブリでは人は育たないと思います。なぜなら、あまりにも久石譲・宮崎駿・高畑勲という不世出の存在に依存しすぎている構造の会社だからです。まあ、だから宮さんが死んだらジブリは一気に密教パワーが崩壊する可能性はあります。下手したら会社畳むかもw

そして、もう一人大事な存在が鈴木敏夫。彼は何をしているかというと、高畑勲と宮崎駿の聖人・超人の世界を我々衆生の世界にマネタイズすることです。鈴木敏夫と宮崎駿が出会ってなかったら、数々の大ヒット作品が出ることもなかったでしょうし、世に宮崎駿の名が知られることもなかったでしょう。宮崎駿ほどの才覚を持ちながら、世に知られることもなく死んでいった人たちがいるかもしれないかと思うと、ゾッとしますね。

宮崎駿は「作品をちゃんと見れば分かります」と度々言っているように言葉だけではなく、絵にもすべてを表現する人なので、あまりつべこべと世に作品のことを語りたくないタイプです。そのため、あまり宣伝・お金活動に関心がありません。日本によくいる職人たちですね。しかし、それだと作品を多くの人に知ってもらうことができない。そこをうまくフォローアップしているのが鈴木敏夫というわけです。彼が宣伝の戦略、ポスター制作などといった経営面を担っています。彼がいなかったら、宮崎駿の名が人口に膾炙することはなかったでしょう。鈴木敏夫がいたからこそ、芸術的で職人の世界であり、大衆に流れ込んでくるはずのないものが降りてきたのです。宮崎駿はお金のやりくりな関しては完全に、能力の輪の外のこととして線引きして、鈴木さんに外注しているわけです。

やはり、宮崎駿には多くの幸運がもたらされているのは間違いないですね。

そんな彼らが今製作中の作品『君たちはどう生きるか』ですが、話では3年後に完成見込みだと言われています。鈴木敏夫が言っていましたが、年齢的に最後になる可能性が高い作品でしょう。なぜわざわざまた引退を撤回してまで、戻ってきたのか。そこまでして作らなければいけない作品は何なのか。その答えが待ち遠しいですね。それまで我々は日々研鑽して、公開された日には多くのものを受け取れるようになっておきましょう。あまり時間がありませんww