「明人、いっしょに帰ろう。」


HRが終わり、明人が廊下に出ると結衣が立っていた。


「ああ、待ってたんか?」


「うん。」


明人に寄り添うようにして結衣がうなずく。


その様子を見て


「おっ!えらい仲ええやん!」


「とてもイトコ同士とは思われへんな~」


明人の悪友たちがやっかみ半分で冷やかしてきた。


「うるさい!ほっとけ!」


「結衣、行こうぜ!」


明人は結衣の手を引き、小走りに廊下を突っ切った。


校門を出たところで2人並んでゆっくりと歩いた。


「何かあったんか?」


明人は結衣の顔を見た。


「ううん、ただちょっと話があったから。」


「ちょうど良かった俺も話あるねん。」


「そうなんや、じゃあちょっと神社寄って行けへん?」


「ああ、ええよ。」


こうして2人は太平軒のすぐ近くにある神社に立ち寄ることにした。


今の時間帯は人もあまり通らず、内緒話をするのにはもってこいであった。


「祭りと初詣以外で来るのって何年ぶりやろ?」


明人が懐かしそうにつぶやいた。


「そうやね、ちっちゃいときは毎日2人で遊びに来てたのにね。」


結衣も懐かしそうに辺りを見渡した。


「ところで話って何?」


明人が切り出した。


「明人の話は?」


「いや、俺のは後でいいから先に結衣の話聞かせて。」


「うん、わかった。」


結衣はそう答えるとカバンからピンクのリボンをつけた包みを取り出した。


「これ、チョコレート、今年は私が作ったから美味しくないかもしれへんけど・・・・・・・・・」


遠慮気味に結衣が差し出すと


「ありがとう、大事に食べるよ。」


明人はニッコリ微笑んで受け取った。


だが結衣の瞳からは涙があふれていた。


「ど、どうしてん?」


明人は戸惑った。


結衣はそのまま明人に抱きついた。


「今までごめんね。」


「嫌なこといっぱい言うて。」


「ホンマにごめんね、ごめんね。」


結衣はそう言った後、明人の胸に顔をうずめわんわんと泣き始めた。


「ゆ、結衣・・・・・・・・・」


明人はどうしていいのかわからず、ただ泣きじゃくる結衣を抱きしめただけだった。