静也は自分の部屋に入ると踊りあがって喜んだ。
普段は冷静な静也であったが、さすがに長年憧れていた晶とこれからずっといっしょに帰れるかと思うとうれしくてたまらなかった。
それに晶のあの態度。
あれは自分に好意を持ってくれているのでは?
そう思うとうれしさは倍増した。
意味もなく部屋の中を踊りまわっていた。
そのときふとクラスで耳にしたある噂が頭をよぎった。
「晶にはよその学校にかっこいい彼氏がいる。」
思い出した途端、静也の動きは止まった。
もうすでにいつもの冷静な静也に戻っていた。
晶ほどのかわいい娘ならば相当もてるだろう。
静也のクラスにも晶のファンは山ほどいる。
まして晶は格闘技をするために町道場に通っている。
周りは男だらけなのだ。
その中の1人と付き合っていても何ら不思議はない。
よくよく今日の晶の言葉を思い出してみても、自分のことが好きとは一言も言っていない。
幼なじみにきらわれているのがいやだっただけでは?
いっしょに帰るのも退屈しのぎに話し相手がほしかっただけでは?
静也の思考は冷静を通り越して、どんどんとネガティブな方向に進んでいった。
先ほどまでの喜びはどこへやら、すっかりと落ち込んでしまった。
といって再び仲良くなりかけている晶のことをあきらめることもできない。
「明日聞こう!」
静也はおもいきって明日、晶に彼氏の有無を聞く決心をした。
もともとダメ元から始まったんだから。
ネガティブな静也にすればかなり前向きな決意であった。