静也は校門の脇で通り過ぎる生徒たちをちらちら見ていた。
晶が自分の存在を忘れていないと知った静也は、彼女といっしょに帰ろうとしていた。
と言っても周りに人がたくさんいるため、家の近くでちょこっと話かけるだけのつもりなのだが。
それでも引っ込み思案な静也にしてはおもいきった行動である。
「おっそいな~」
晶のクラスの生徒は帰っているのだが、肝心の晶は一向に前を通らない。
気になって校舎のほうを向いたとき
「だ~れだ!」
目隠しされた。
「えっ!」
突然のことで驚いたが、この声は間違いなく晶である。
静也はおそるおそる
「あ、晶?」
「ピンポ~ン!」
振り向くと明るい笑顔の晶が立っていた。
「誰か待ってるの?」
静也は大きく首を振って
「べ、別に。」
「よかったらいっしょに帰れへん?」
晶は少し首をかしげて静也を見た。
静也は大きくうなずいて
「うん、いいよ。」
「じゃあ、帰ろう。」
晶は安心したように歩き始めた。
静也は信じられない気持だった。
まさか晶の方から誘ってくれるとは。
「ところで一緒のクラスの友達は?」
静也は晶が1人でいることを不思議に思った。
「みんなクラブ、私はほら町道場に通ってるから。」
「じゃあ普段はいつも1人で帰ってるの?」
「うん、そうよ。」
静也は意外だった。
「静也は?」
「俺はいつも1人。」
「それやったら声かけてくれたらよかったのに。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「最近ぜんぜん話しかけてくれへんから、てっきり嫌われてるのかと思ってた。」
「そ、そんなことないよ、晶は人気者やから俺のことなんかすっかり忘れてるって思ってた。」
「私が静也のこと忘れるはずないやん。」
そう言った晶の笑顔に静也は胸がときめき
「じゃあ明日からも一緒に帰ろう。」
普段からは思いもよらない大胆な言葉が出た。
「うん。」
晶は少しだけ恥ずかしそうにうなずいた。