アメーバにピグライフというゲームがあります。ゲームというよりも、かなり中毒性の強い麻薬のようなものだと言ってもいいかもしれません。

 付き合っていた彼女がこのピグライフに夢中になりすぎて、そのせいで彼女と別れることになってしまったという、とある男性のお話です。

 彼、A君(30 代男性)は年上の彼女、Bさん(40 代女性)と遠距離で付き合う恋人同士でした。付き合い始めて 1 年半ほどでしたが、遠距離なので、直接会って一緒に過ごすのは 1 ~ 2 か月に 1 度程度でした。会えるときは 1 週間ほど休みを取って一緒に過ごしていたようです。それ以外は電話、メール、チャット、SNS 等の通信手段を積極的に活用して、会えない時間も親密な交際をしていました。

 BさんはA君と付き合う前からアメーバピグで遊んでいたようですが、A君も彼女に誘われてピグで遊ぶようになりました。ピグのような仮想空間は遠距離恋愛の恋人同士にとってはお互いの距離を縮めることができる便利なツールです。

 A君はそれほどピグにはまることもなくほとんどログインすることはなかったようですが、そのうちにBさんの方はピグのゲームの一つ「ライフ」に手を出します。

 A君と会えない時間の寂しさを紛らすためか、Bさんは徐々にピグライフにはまってゆくのですが、そのうちに、寝る暇も惜しんで遊ぶほどにはまってしまいました。ピグのスタミナの回復時間に合わせて行動するのが彼女の日常になってゆきます。

 やがてはA君との会話に費やすための時間すらピグライフに傾け始めます。新しく始まったピグカフェも始めてしまったのでますます時間を奪われるようになります。

 A君と電話やチャットで話している最中ですら、その裏でパソコンの画面を凝視してピグライフの収穫作業に夢中になっていたので、会話の内容もだんだんといいかげんになって、彼の問いかけに対しても「あ~」とか「う~ん」とよく考えもせずに適当な相槌を打つようになってしまいました。

 そのせいか、A君としては過去に話したはずの話でも、Bさんはよく覚えていなくて喧嘩になることもあったそうです。

 それでも、「離れている時は仕方がない」とA君は自分に言い聞かせて、Bさんがピグライフに夢中になっているのを許容して、我慢していました。

 そんなある日、A君は 2 か月ぶりに 1 週間の休みを取って、Bさんに会いに行きました。Bさんにはとある事情があって長距離の移動ができないので、会いに行くのはいつもA君の方からです。

 これでやっと会えなかった時間の埋め合わせができると思って会いに行ったのですが、なんと、BさんはA君が会いに来て隣に座っているにもかかわらず、相変わらずピグライフに夢中になっていたのです。

 朝起きるとまずピグライフ。朝食の後でもピグライフ。一緒にお出かけしても帰ってくるなりパソコンを起動してピグライフ。セックスの後でもピグライフ。夜寝る前にもピグライフ……。

 もはや彼女の生活の中心がピグライフになってしまっていたのです。

 A君もたびたび口に出して注意はしていたようですが、Bさんの方は自分がピグライフに夢中になっている自覚すらなかったようです。実際にはA君の目の前で何時間もピグライフをやっていたにも関わらず、「1 日に何時間もやってるわけじゃないでしょ」などと本気で言っていたそうです。

 「今、豊作タイムだから……」などと言って、A君に背中を向けてパソコンの画面にくぎ付けになっているBさんの姿を見て、さすがにこれはもう病気だと思ったそうです。完全にピグライフに中毒していました。

 彼女が飼っている猫もニャーニャー鳴いて注意を引こうとしていましたが完全に無視。ペットの養育放棄状態です。ある意味、ペットに対する虐待行為と言ってもいいでしょう。彼女は一人暮らしでしたが、もし子供がいたら育児放棄するんだろうかとすら思えたそうです。

 あきれたA君は、約束の滞在期間よりも 1 日早く帰ることにしました。これ以上一緒にいても時間の無駄だと考えたのです。

 A君が荷物をまとめて帰る準備をしている間もBさんはピグライフに夢中になっていてそのことに気づかず、A君が玄関を出た後になってやっと気づいて慌てたそうです。

 BさんはA君の携帯に電話をかけて必死になって引き留めようとしたようですが、ピグライフに夢中になってA君と過ごす時間をないがしろにしていたことを謝ろうともしないばかりか、帰ろうとしているA君の行動がおかしいと逆切れして怒鳴りつけてきたそうです。

 仲直りしようという相手に怒鳴りつけて喧嘩を売るような態度では仲直りなどできるはずもありません。結局A君はそのまま自宅に帰ってしまったそうですが、怒鳴りつけてくる彼女が怖くて電話にも出れなかったそうです。ここまで来るともはや言葉の暴力、DVです。

 これがきっかけで、A君はBさんと別れることになったそうです。

 ただ、A君には別れるつもりは全くなく、Bさんの方から一方的に別れを告げられたそうです。その後話し合いの機会もなく、「もう関わらないで」と言われて関係は終わってしまったということです。

 A君はしばらく待っていればBさんも目を覚ましてピグライフから解放される日も来るだろうと考えていたようですが、そんなA君の気持ちなどBさんには関係なかったようです。

 Bさんからすると、自分がピグライフに夢中になっていたせいでA君が帰ってしまったという現実を認めたくはなかったのでしょう。逆にBさんの方から別れを告げることでしか自分のプライドを守ることができなかったのかもしれません。ピグライフが原因で彼氏と別れたなんて恥ずかしくて人に言えないとでも思ったのでしょう。

 何とも虚しいお話です。

 離れている間にBさんをピグライフに夢中にさせてしまったのはA君の愛情が十分ではなかったというのも原因かもしれません。浮気相手が人間の男性ではなくピグライフだったということなのかもしれませんが、いずれにしても、人生のパートナーともいうべき相手との人間関係を、こんなつまらないことで台無しにしてしまうなんて悲しいですね。

 たとえA君の愛情が十分でなかったとしても、A君は彼なりにBさんを愛そうと努力していたはずです。2 か月に 1 度きりであったとしても、A君は頑張って会いに来てくれていたわけです。その恩を仇で返す様な態度で追い返しておいて、都合が悪くなれば自分から別れを告げてポイ捨てしてしまうなんて、あまりにもひどい。

 人を人とも思わぬ態度です。人間は、ゲームの中の登場人物や便利な道具のように、不要になればプレイヤーの意志で簡単に削除できるような存在ではありません。ピグライフというゲームのやりすぎで、現実と仮想の区別もつかなくなってしまったのでしょうか?

 Bさんには自分自身の愛情はどうだったのかと本気で反省してもらいたいと思います。

 ピグライフにはまっている人は、自分が中毒しているという自覚がない人も多いようです。うすうす感じてはいてもそれを認めたくないという人もいるでしょう。自己矛盾を正当化しようと無理をしているうちに精神的におかしくなって、キレやすくなっている人もいます。

 私もピグライフをやりますが、大切な人を犠牲にしてまで遊びたいとは思いません。ましてや、こんなゲームごときで人生を台無しになどしたくありません。

 ピグライフはお酒やタバコと同じで、中毒してしまうとその快楽を正当化するためには手段を選ばなくなる危険性があります。

 ボタンを押せば即時的に結果の出るゲームの世界にはまりすぎると忍耐力も失われてゆきます。アクションを起こしてもなかなか結果の出ない現実世界では様々な場面でイラ立ちを感じ、何事にも我慢のできなくなってしまう人もいます。そのようなキレやすい性格が犯罪に結びつくことだってあるでしょう。

 ピグライフで人生を棒に振ってしまう人もいるのです。

 あなたは、大丈夫ですか?