むかしむかし の20世紀の終わり
日本ではまだ平成になって間もないころ
東京の辺りに住所不定の一人の男がいました。
男は時々ちんどん屋をしたり
地方のお祭で体に金粉を塗って火を噴き
日銭を稼いで暮らしていました。
ある時、どこかで蕎麦を食べて
小さい時に蕎麦が大好きだったことを思い出しました。
もう死んじゃった秩父のばあ様には蕎麦打ちを教えてはもらえません。
でも叔母さんに教わって それから暇さえあれば蕎麦打ちをしていました。
いつの頃か石臼やら伸し棒やら麺板やらコネ鉢やら道具も揃ってきて
蕎麦の実を探してきては石臼で挽いてつなぎを使わず十割で打つようになりました。
そして大晦日には実家で蕎麦打ちをして近所や親戚に振る舞いました。
噂をきいて大晦日には蕎麦を食べに来る人が毎年増えてきました。
毎年遅くまで蕎麦打ちをして配達もして終わるのは年明けの少し前ぐらいになりました。
だから大晦日は紅白も笑ってはいけないやつも見ませんでした。
男は疲れて寝正月になるのがイヤだったので3ガ日はタキシードを着るようになりました。
ちんどん屋の衣装で持っていたのです。
年の初めをキチッとした格好して身を引き締めました。
そして21世紀になると男はパプアニューギニアの村人になってしまいます。
毎年パプアニューギニアへ通って日本で唯一のニューギニアカフェまではじめてしまいました。
今では大晦日には店で蕎麦を打ち
正月3ガ日にはタキシードを着て
パプアニューギニアの頭飾りまでつけて
鼻にはヒクイドリの骨まで刺して
年末年始は休まず店を開けるようなりましたとさ。
めでたしめでたし?
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宜しくお願いいたします。