12月はやはり『猿』と言わざるを得ないでしょう。

 

 

 

2025年12月の読書メーター

読んだ本の数:15冊

読んだページ数:4554ページ

 

 

■暗殺の年輪

12月3日 著者:藤沢 周平

初期の作品ということですが、後作品に通底する、端正な筆致とそれを追っていく愉悦はこの時期から群を抜いており、全編を通して不朽の味わいを感じさせてくれます。無役の平侍が中老暗殺を依頼された表題作、再会した幼馴染みに暗い影を見る『黒い縄』、人殺しの情婦を見張ることになった『囮』など全五編。市井の人情談もあれば武家社会の物語もあり、さらには晩年の葛飾北斎を描いた一篇も含まれ、中々趣向に富んでいると言えるでしょう。そしてどの話においても、男女の間に通ずる情や人間の抱える業が窺え、読み終えて後は深い感懐を覚えます。

 

 

暗殺の年輪

 

 

 

 

 

■病葉草紙

12月5日 著者:京極 夏彦

 

 

■万能鑑定士Qの事件簿Ⅸ

12月7日 著者:松岡 圭祐

映画の原作になった回ということで、話のスケール的にもストーリー展開的にもハイライトの一冊であり、取り上げられているのも名画「モナ・リザ」ということで、これまでよりもいっそう鑑定士小説っぽい内容だったと思います。「モナ・リザ」の来日に伴い、臨時学芸員登用のために奮闘する主人公。しかし、そのなかにおいて持ち前の鑑定眼を失うという憂き目に遭うのでした。全貌としてはいつもどおり大掛かりで狡猾な罠。そして特に印象的だったのは、歴史的な名画からスーパーで買った牛肉まで聖俗尊卑分け隔てなく扱おうとする主人公の姿でした。

 

 

万能鑑定士Qの事件簿IX

 

 

 

 

 

■ここは今から倫理です。1

12月9日 著者:雨瀬 シオリ

「倫理」という地味なこと極まりない教科が軸に据えられており、それが新鮮で興味惹かれるものがあります。実際読み始めれば、主人公教師の捉えどころのない魅力がまず印象的。そして周囲を見下している者、いじめられている者、夜遊びに耽る者。それぞれ胸に凝りを抱える生徒達が倫理の授業とその教師に触れる事で、次第に蟠りが氷解していく。全篇通して弱者に寄り添うような内容であり、自分が特に好きだったのは二篇目。他人からしたら「そんな事で」と思うような事でも本人にとっては命に換わる程重い絶望になる、という示唆が胸に迫りました。

 

 

ここは今から倫理です。 1

 

 

 

 

 

■緋色の囁き

12月11日 著者:綾辻 行人

 

 

■くらのかみ

12月13日 著者:小野 不由美

座敷童子や呪いやミステリーといったガジェットが相和して、唯一無比の読み味を生み出していると思います。本家の屋敷に集められた親戚一同。知らぬ間に増えていた子ども、食事への毒草混入に端を発した一連の怪事件。論理的に真相が導出されていくさまは王道的ミステリーの佇まいですが、その中において怪異が謎解きのキーになっている点が面白いところ。そうした意味でも、ミステリーとして怪異が存在している必然性が感じられました。そして、「四人のはずが五人いる」「増えたひとりは座敷童子」という導入には、胸の高鳴りを覚えたものでした。

 

 

くらのかみ

 

 

 

 

 

■時鐘館の殺人

12月15日 著者:今邑 彩

 

 

■小説 不能犯 女子高生と電話ボックスの殺し屋

12月17日 著者:ひずき 優

 

 

■江ノ島奇譚

12月19日 著者:高田 崇史

まさに奇譚と呼ぶが相応しい神秘玄妙な一篇であり、歴史・フォークロア的な趣向も感じられ始終面白く読んでいました。飯盛り女と生臭坊主が毎夜の悪夢を祓うために江島明神を訪れる。そこで二人が耳にするは、僧侶と稚児による過去の心中伝説。ぬっぺらぼうや血塗れ坊主という怪談色の強いガジェットを含みつつ、後半では少しファンタジー色も感じられたものでした。また、弁財天や稲荷明神といった神々に対して一般的にイメージされるものとは違う、あまり知られていない姿が語られているのも面白いところ。そして巻末に収録された狂言も出色です。

 

 

 

江ノ島奇譚

 

 

 

 

 

 

■書楼弔堂 破曉

12月21日 著者:京極 夏彦

 

 

■美しい探偵に必要な殺人

12月23日 著者:藤石 波矢

ラストがイヤミス的で実にいい。ある程度こうゆう事だろうかと想像の及ぶ部分もあったので、そこまで驚天ではありませんでしたが、全てが明らかになった果て、倒錯と背徳が綾なす真相にはゾクッと来ました。見目麗しい探偵と彼女に恋する助手が、過去に携わった幾つかの事件を電話越しに追想する。飛び降り自殺、殺人事件、企業不正と失踪。それらは仇敵である国会議員の焼死へと繋がっていく。事件そのものにそこまで惹かれる部分があった訳ではないですが、全体的な構成が面白いと思いますし探偵も魅力的な造形であり、始終面白く読んでいました。

 

 

美しい探偵に必要な殺人

 

 

 

 

 

■映画ノベライズ 不能犯

12月25日 著者:希多 美咲

 

 

■美しい探偵に必要な殺人

12月27日 著者:藤石 波矢

 

 

■猿

12月29日 著者:京極 夏彦

この読後感たるや他の追随を許さない、京極小説でしか成し得ない、稀代の「怖い」小説であると思います。岡山の奥のそのまた更に奥、曾祖母の遺産を相続するため、縁続きの女性が限界集落へ赴く。辺境の地を支配する怖さ。理屈や意志の力では御す事のできない怖さ。『幽談』収録「こわいもの」に通底する恐怖論もあれば、オチや全体的な佇まいには「」談シリーズの長編版とも言うような趣を感じました。また、最後3ページにおける転調には凄いところに放り出された感もあるし、冒頭一文の「猿がいる」がこう効いてくるとは予想だにしませんでした。

 

 

猿

 

 

 

 

 

■もふもふカフェ日記: 猫ちゃんたちの毎日

12月31日 著者:猫ちゃんといっしょ

横浜の猫カフェによる猫ちゃんの写真集。いろんな種類の猫たちの、遊んだり眠ったり、あるいは何もしていない姿が納められており、見ているとつい相好が崩れます。推しはエキゾチックショートヘアのぶーちゃん。だいたい眠そうな顔か、もしくは寝ている写真ばかりで、たまに起きているかと思うとまるでもって躍動感の無い不動の佇まい。まあそれも猫らしいと云うか魅力であると言えるでしょう。そんなぶーちゃんをはじめ、素敵な猫達に会えるカフェ。猫好きの方は写真集を眺めてみて、そして横浜に来た際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 

 

もふもふカフェ日記