帰宅した父は、閉じ込もっている私を無理矢理部屋から引きずり出した。
私はヒロが死んだことを受け入れることができなくて……
『行きたくない!』
と、駄々をこねていた。
そんな私を父は一発ぶん殴り、『ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ、コラァ』と怒鳴りあげた。
『自分の友達を見送ってやることもできねぇ腑抜けに育てた覚えはねぇ! きちんと別れる準備をして来い!』
それは、今までで一番怒っていた顔だったと思う
父の言葉で、私は夜中の不思議な出来事を思い出した。
怖いはずなのに怖くなかった白いモヤ。
あれはヒロだったんじゃないだろうかと思った。
よくよく思い出してみれば、ヒロが亡くなったとされる時刻と私がモヤを見た時刻はよく似ている。
ヒロは私に、わざわざお別れを言いに来てくれたのだろうか?
そう思った時、私は急に自分が恥ずかしくなった。
父に背中を押され、私は涙でぐしゃぐしゃの顔を洗い、もう一度制服を着直した。
そして父に頼んで、少しだけ時間を貰った。
了承を得た私はすぐに部屋に戻り、ヒロに手紙を書く。
最初で最期の手紙。
父も何でも良いからヒロに言葉を送れと言った。
父が服を着替えるわずかな時間しかなかったから、きっと私はたいした事を書けなかったと思う。
今となっては、何を書いたのか思い出すことも出来ない。
少ない時間の中、陳腐で幼稚でたわいもない言葉しか、思い浮かばなかっただろう。
ただ……泣くしかしなかった自分に、とてつもなく後悔したことは覚えている。
母に『用意しときなさい』と言われた時に、きちんと準備出来ていれば……。
そうすれば、もっとマシな言葉が思いついたかもしれないのにと悔やんだ。
10分少々で書いた初めての友達への手紙は、私の後悔の塊となった。
余談となるけれど、その後何度かヒロへの手紙を書いた事がある。
結局毎回上手く言葉が浮かばなくて、途中で燃やしてしまう。
15年たった今でも、ヒロへの手紙を完結させることは出来ない。
今となっては、きっと陳腐でも幼稚でも……
あの時書いた自分の言葉が、一番ヒロに届いたんじゃないだろうかと思う。
いや、そうであって欲しいと心から願っている。
後悔の塊を送ってしまったなんてバレてしまったら、ヒロがまた(笑)出てきて、『ふざけんなー!』って、怒りそうだから。