歯列矯正(ワイヤー矯正)で大変なこととして、
矯正前にはまったく考えていなかったことがあります。
それは、
歯の移動に伴って生じる
「かみ合わせの変化」への対応です。
私には、矯正前には、下顎の動かし方によって、
2種類のかみ合わせがありました。
① 下顎がひねり・横ずれを起こしながら動いた場合は
過蓋咬合 (←ものを嚙み潰すのには不便はありませんが、
右の側頭筋が緊張して、片頭痛発作がひどい。)
② 下顎がまっすぐな状態になったときは、
左側2番が反対咬合、右奥歯は「開咬」。
(← これではほとんど何も噛めません。)
どちらも「不正咬合」で、
客観的にみれば、
かなり不便かつ危険な状態だったと思いますが、
本人としては、
長年のうちにそれなりにこの状態に慣れていました。
ですので、
(矯正前の)自分のかみ合わせの主観的な「不都合度」を
1(=ほぼ問題なし)~ 10(=耐えられないレベル)
の数字で評価するなら、
「3~4」ぐらいだと感じていました。
自分の歯並びの中で、
どこが歯ブラシの届きにくい場所なのかも
把握していたので、
食後の歯磨きも、
ルーチン化した手順で、ほいほいやっていました。
で、5年前に最初に装置をつけた時、先生に
「これからかみ合わせがどんどん変わってきて
大変だと思うけど、がんばってください」
というようなことを言われたのですが、
内心、
「現状、ちゃんと噛めなくて不便な状態で、
これから治療して良くなっていくはずなのに、
かみ合わせが変わって大変になるってどういうこと?」
と不思議に思っていました。
今、この5年間を振り返ってみると、
先生が言われたように、
自分のかみ合わせは
治療ステップごとに確かに変わってきました。
とはいえ、かみ合わせの主観的な「不都合度」は、
ほとんどの期間で、
「3~4」のままだったような気がします。
矯正前と変わらず、
「不都合といえば不都合、
そして違和感があるといえばあるけれど、
耐えられないほどではない」
という感じです。
ただ、例外としてあげておきたい点が
いくつかあります。
まず一つ目。
矯正を始めたばかりのほんの1、2か月で、
前歯のガタガタがそろってきたのですが、
矯正3か月目ぐらいに、
「反対咬合だった左上2番が、
下の2番を乗り越える」
という動きがありました。
このとき、上下の2番が
起きていても寝ていても、
ガチガチとあたるのですが、
これが飛び上がるほど痛かったです。
痛いだけでなく、
「歯が欠けたり、折れたりしたらどうしよう」
という恐怖もあり、
ほとんど眠れない1か月を過ごしました。
この時の「不都合度」は、
「9」ぐらいです。
で、
無事に「左上2番が、下の2番を乗り越えた」後になって、
「そういえば、この間の調整のときに先生が、
『2番が乗り越えますよ』と言っていたなあ」
と思い出しました。
そして、「乗り越えますよ」だけではなくて、
「乗り越えるときは痛いですよ」とか、
「上下の歯をぶつけすぎないように気をつけてくださいね」
とか言ってくれたら、心の準備ができてよかったのにな、
と思いました。
二つ目の例外は
矯正を始めてちょうど2年が経った頃のことです。
左側の上下の奥歯の当たりが一時期(ひと月ぐらい)、
とても強くなりました。
はっきりとはわからないのですが、
その時は奥歯の傾きを治していたのかもしれません。
そして、上下の奥歯の出っ張りが
ちょうどぶつかってしまう状態だったのかもしれません。
とにかく、
「ガチガチと歯がよく当たるなあ」と思っていたら、
左上6番に何か突起のようなものを舌で感じるようになり
(←後から考えると、ひびが入っていたんだと思います)
そして遂に、
おせち料理(固い田作り)を食べたときに、
左上6番のインレーが取れました。
かかりつけの一般歯科の先生に
すぐに診てもらえましたが、
インレーの下に虫歯があったとのことで
詰め物がひとまわり大きくなってしまいました。
だから、この時のかみ合わせの「不都合度」も
「9」ぐらいだと思っています。
30年以上も前のインレーなので、
いつ取れても不思議ではなかったのですが、
でも、
矯正中の「かみ合わせの変化」は危険だということが、
身に染みた出来事でした。
三つ目の例外は
左上3番が少し八重歯になっていたのを
歯列に引き込んだときに、
歯が舌側に傾きすぎて、
上下の3番が
とがった先っぽ同士で
早期接触するようになったことです。
この「不都合度」は「3~5」ぐらいかな。
期間としては長く、3年ぐらい続いて、
(←先生には何度か不都合を訴えたのですが、
先生なりの治療ステップがあるのか、
改善をあまり急いではもらえませんでした)
その間に3番の先っぽが削れてしまったので、
悲しい気持ちがあります。
以上3つが、
矯正治療に伴って生じる「かみ合わせの変化」が、
つらかったケースです。
矯正前には、
まったく考えていなかった盲点でした。
あと、「つらい」というわけではないのですが、
「かみ合わせの変化」とともに、
「歯ブラシの届きにくい場所」も
どんどん変わっていったので、
歯磨きの手順をそれに合わせて変更するのが、
多少なりとも面倒でした。