マウスピース矯正は難症例には向かない

とされていること、

矯正を考えている方の何割ぐらいの方が

ご存じなのでしょう?

 

かく言う私も、

6年程前、矯正歯科探しをしていた頃は

 

「ワイヤーを使ってできることは、

マウスピースでも出来るんじゃないのかなあ。

マウスピースだって、歯並び全体に

力をかけられるわけだし。」

 

ぐらいの認識でした。

 

そして出来ることなら、

やはり目立たないマウスピースで

矯正したいと思っていました。

 

ところが矯正歯科での初診相談ではあっさりと

「りんさんの歯並びはマウスピースでは治りません」

と言われてしまいました。

 

でも、そう言われても簡単には納得できず、

 

「えー? 検査もしていないし、

口の中だって一瞬見ただけなのに、

何でそんなにはっきり言えるの?

他のマウスピースが得意な先生のところに行けば、

マウスピースでも治せるかも?」

 

なんてトンチンカンなことを考えていました。

 

ただ、お話をお伺いするうちに

この先生(←今、お願いしている先生です)の

お考えが何となくわかってきました。

つまり、

 

★ ワイヤーとマウスピースとでは、その「能力」が全然違うこと。(1200ワットのドライヤーなら髪が早く乾くけれど、700ワットのドライヤーではなかなか乾かない、みたいな違いらしい。)

 

★ 先生ご自身は「高性能な」ワイヤー矯正を行う技術があるので、わざわざ「低性能な」マウスピースを使おうとは思えないこと。

 

★ 従ってこのクリニックではマウスピース矯正はやっていない。どうしてもマウスピースがいいなら、他をあたってほしい。

 

 

はい、ごもっともです。

今、読み返してみても、おっしゃることは限りなく正しい。

 

この初診相談の日には、

あまりにも「正しい」発言のオンパレードに

何となく気後れがして、

「この先生にお願いしよう」とまでは

決められず、いったん持ち帰ることにしました。

 

後日改めて精密検査をお願いしたのですが、

その時も、本当のところはまだ迷っていました。

「いざとなったら(10万円近い)精密検査代さえ払えば、

矯正治療はキャンセルできるよね」

と思っていました。

 

 

結局は精密検査後にキャンセルすることなく、

無事にワイヤーを装着して、5年が経ったわけですが、

 

★ ワイヤーとマウスピースとでは、その「能力」が全然違うこと

 

を日々実感しています。(←このブログ記事の本題です)

 

私はマウスピースを使った経験はないので、

直接的にワイヤーとマウスピースを

比較したわけではありません。

 

でも、今までに先生が

いろいろな太さと種類のワイヤー

(形状記憶ワイヤー、カーブつきワイヤー含む)に

いろいろなループ(meaw矯正で見られるようなブーツ型のループ含む)を曲げて、

アンカースクリューも使って、

ゴムやばねも取り付けて、

 

★ ねじれた歯を回転させたり

★ 傾いた前歯の歯列を水平にしたり

★ 歯の高さがばらばらだったのを揃えたり(挺出)

★ 小臼歯一本だけ圧下したり

★ 6番を平行移動したり(←まだ完了はしていません)

 

してきたことを見てきました。(注1)

 

こういったことは、

あの薄いマウスピースではとてもできないと思います。

 

マウスピースを歯にかぶせた時に

歯にどういう具合に力がかかるのかを

想像してみると、

隣り合った歯の足並みが揃うような動きは得意かも

しれないけれど、

その他の動きについては、

あまり緻密にはコントロールできない気がするんです。

 

 

公益社団法人日本矯正歯科学会のサイトには

 

マウスピース矯正の適応は、

 

歯の移動量の少ない症例に限られる(軽度の乱杭歯、軽度の歯の空隙、矯正治療後の軽度の後戻り等)

 

とあります。

 

6年前の私が、この学会の説明を読んでも

あまりピンとこなかったかもしれません。

 

でも、今はわかります。

マウスピース矯正は難症例には向かないということ。

 

たとえ、矯正の認定医・指導医であっても、

低性能な装置であるマウスピースでは、

治せない症例があるんです。

 

このことを、もっとたくさんの

矯正をお考えの方たちに知ってもらいたいな、

と思います。

 

 

(注1)

先生がこの5年間にしてくれた治療内容を

大まかとはいえ、ブログに書いてしまっていいものか、

悩みました。

 

「どんな材料を使って、どういう風に、何を治すのか」という情報は、厳密には先生が培われてきた技術力の一部であり、先生の許可なく口外してはいけないような気が今もしています。

 

でも、安易に行われたマウスピース矯正やMEAW矯正の結果に苦しんでいる患者が少なくないことに、心を痛めている先生なので、きっと私の意図を汲んで許してくださるでしょう。許してください。