読書感想「ぼくの図書館カード」 | アパートメント3号室

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家と絵本とカメラと


Richard Wright and the Library Card
「ぼくの図書カード」
ウィリアム・ミラー 文
グレゴリー・クリスティ 絵
斉藤規 訳

ぼくはおもしろい話を自分の力で読みたいと思った。でもまずしかったから、家に本はなかった。ぼくはひとりで本が読めるようになっても、自分の本を持つことはなかった。ぼくは本を読みたいという思いで胸がいっぱいになっていった。町の図書館には本がある。けど、利用できるのは白人だけだ。
「アメリカの息子」で有名な作家、リチャード・ライトの自伝から抜粋して書かれた絵本。

私たち現代の日本人にとっては当たり前のように存在する図書館とサービス。しかし、まだ100年もたたない昔、アメリカでは黒人が利用できる図書館サービスはなかったことが驚きであり、だからこそ、図書館という施設とサービス、学びたいという気持ち、読書というものが人間に与える喜び、そして、周囲の目を盗みつつ、彼に自分の図書館カードを貸して読書の機会を与え続けた白人同僚の勇気など、人の愚かさも素晴らしさも伝わる絵本。
なぜか我が市には2冊あるはずが1冊が行方不明で、私としては、主人公のような苦境にある人が、なにか思って保管しているのだと信じたい。