八月納涼大歌舞伎の新・水滸伝での主演は猿之助の代演にも関わらず、とてつもない当て書きのような出来だった。

しかも二列目ドセンなんて2メートル先に生で隼人!まさに隼人にドボンの沼り席じゃないの!これはもう運命!

BS時代劇大富豪同心、卯之吉の気配の欠片すらない、舞台の真ん中の隼人は男臭さを纏って悪党のマントを翻し、竜の頭に乗り(宙乗り相勤め申し候)天翔ける漢だった!!

ハイ!私の中で「永遠の二枚目」が音を立ててグァーンと入れ替わりましたよ!←ニザ様はいま静かに二枚目の殿堂に入られました

17歳でお練りの列の最終で前髪下ろして下向いて歩いてた可愛い男の子の隼人はもう居ない。

インタビューで「これから挑戦したいお役は?」と聞かれ

「仁左衛門の伯父様がおやりになった役を全て、それに尽きます」と堂々と答えたのには全員が度肝を抜かれた。

目標を最高の位置にロックオンした男はもう迷うこともないんだな!

顔良し声良し姿良し、の三拍子(の素質)が揃ってこそこれが言える、確かに今は隼人の他にこれを言える歌舞伎役者は居ない。誰も文句が言えないってこと。

ニザ様だって二十代はヒョロッヒョロの呑気な三男坊で、仁左衛門にさせられるなんて全く思って無かったんだから、隼人は覚悟が違う、凄いよもう。

テレビでもガン良し、な映えるところはすでにニザ様の昔のTV時代劇出演のそれを超える、さすが萬屋、先の錦之助の血もあるね。

猿◯助の事件は、確かに悲しいけれど「三代目から託された大きな仕事を果たし、そしてその役目は立派に果たし終わったのだ」とも言える

(その事に関しては)心からありがとう、と思うわ。

スーパー歌舞伎をやり続けワンピースで若手を育てて大成功!大御所が出られないコロナ禍の歌舞伎座に毎月出続けチケットを売りまくった偉業は誰も真似できない金字塔だ。

そしてその仕事の最後、居場所を空けたからそこ、育てた種たちがこうして羽ばたくのを観ることになる不思議。

ここまでは契約で決まっていた舞台だから良かったけど、来年からは澤瀉屋の屋台船がどんな荒波を受けての航海になるのか。

そこにリンクするような、一丸となっての今回の水滸伝、梁山泊の一味の活躍がいちいち胸を打つ。
横内謙介の演出にシテヤラれる号泣!不安じゃない、嬉涙だよ!

ラストの宙乗りは途中、乗りこなすのにガガーっと竜をいなすとこがあるんだけど、前日公演でハリキリ過ぎて竜の尻尾が故障したみたい。

チョイと短い尾の竜に乗った「二枚目の看板を背負う覚悟」が悠々と夜空に消えて行った