久しぶりに新派公演を観て来ました。
若くして世を去った十八世中村勘三郎の三回忌。
そしてその先代、じじんちゃま十七世勘三郎の二七回忌。
歌舞伎座では先月、追善公演が行われていましたが、こちらの新派は先代の長女、波野久里子さんがいらっしゃることから、真の一族集合の追善となるわけで、勘九郎七之助にとっては初めての新派、伯母との共演となる記念すべき公演ですよ!
ロビーではこの二人の大きな写真に手形ブロンズ像にお花が備えられた祭壇があり、お客も手を合わせることが出来て嬉しい。
二人の新派への過去出演作、(今回の演目です!)のポスターが貼られ、食堂では「勘三郎好み」が詰め込まれた(カツサンドお蕎麦にわらび餅など若干脈絡無いのがイイ)お弁当が供されて、追善のムードが温かいわ。
十七世勘三郎の娘・久里子さんの可愛がりようは有名な語り草になっているほどの超溺愛だったわけで。
その久里子さんを思う心が、新派を愛する、応援する形になって中村屋に流れているのね。
演目、1つ目は先代水谷八重子の名作花柳十選の中の「鶴八鶴次郎」を、フレッシュコンビの勘九郎と七之助で。
いかにも新派らしい、しっとりとしていて切なくて…な大正時代の男と女の人情劇に体当たりで挑戦する兄弟がとっても良かった。
特に、最初の初々しい三味線と謡い(新内)で共演する若い二人の恋の鞘当て、と言うかもどかしいLOVEがいいよね~♪
<七之助の気の強さが出る、おきゃんな女の子だ最高!
その鶴八(七之助)は、今の世で言うダメンズ?の鶴次郎(勘九郎)を愛したり愛想尽かしたりで、女として芸人として、成長というか熟してゆく様を魅せる…とまではまだ行かないにしろ、揺れる女心の儚さを、きちんと出しててすごく良かった。
特に声、すごく安定してる!
<玉三郎が最近、七之助仕込んでくれてるのがありがたいよ!正月共演も控えて、これは先が楽しみっ!
勘九郎は江戸っ子気の短けぇべらんめぇ!な、芸人、そして「男」の意地の張り通しを熱演していて小気味よい。
どんな役でも嫌味にならない、なんとも言えない包容力?のようなものが底にあるのは持って生まれた財産だよねぇ。
まさにお坊ちゃんを武器にして、まっつぐw看板役者に育っておくれ。
と、ここで余談。
休憩時間にロビーの椅子で、隣に、あまり歌舞伎などをご覧になったことがなさそうなご夫婦(ちょい若40代ってとこか)の後になり、会話が漏れ聞こえたわけですがw
「あんまりにパパそっくりで驚いちゃう、あれじゃモノ○○だよねぇ…自分が無いよ」って。
ちょっと!何言ってんの!<とその奥様に言いたいのを我慢爆
まさに型を作って、からの型破り。
追善公演の何たるかを解って言ってんですかアンタ!
全国津津浦々からバス仕立てて団体でやってくる、中村屋ファンのおじいちゃまおばあちゃま方に、パパそっくりに見せて安心して貰うのが1番の今の仕事。
「ああ、勘三郎そっくり!」そう言わせて、泣かせて、それで良し、じゃないのもう。
良くやった勘九郎、私も唸ったわ、あまりに瓜二つ「勘三郎ならこう演じたはず」ってぇとこを魅せてくれたんだね。
ある意味、その歌舞伎をあまりご存じないであろう方達も知っている(似てる似てないと言わせる事が出来る)「十八世中村勘三郎」の偉業に頭が下がる思いがしました。
<それそのことが凄いこと
私自身は小学生の頃に、先々代の勘三郎の本当に最後の数年の円熟期を、祖母に連れられて見ていたし、同時期に三越劇場(これは父の仕事関連でチケットがいつもあった)を母や祖母に連れられて良く新派で観ていたわけです。
<ま、日本橋三越のお食事とアイスクリームが楽しみで、で(^_^;)
だから(遠い遠い記憶で申し訳ないけれど)先代と先々代の勘三郎が似ているとは全然思わないんですよ。
世代があまりに違い過ぎて比べられないし、それくらい先々代の最後は子供心にも大迫力凄かったってことで。
だからこそ、十八世の早世が惜しくて切ない。本当に勿体ない。七十代後半の円熟が観たかった(T_T)
故人縁の役者ってことで、なんとあの柄本明さんもご出演。
二人の間に挟まれて、右往左往の面白さ!ラストのしっとりとした余韻を残す居酒屋のシーンは圧巻の演技力で泣かせるよヲイ。
<ああ日本人で良かった、日本人の「情」ってもんを見せつける新派恐るべし
ここで余談2
大向こうさんから、もちろん声が掛かるんだけど…
なんと、柄本さんには「えもとっ…」とちょっとだけ「とっ…」を優しく…いいわコレ。(^_^;)
あ、屋号で言えば「乾電池っ」でもイイんじゃないかと思う私は下北アングラ世代だ爆!
あの30年前、まさか柄本さんが新派に出るようになるなんて想像も出来なかった!
<長く生きてると良いもん観られる
休憩挟んで二演目目は、これは先々代が女形、で出演された「京舞」
ノンフィクションもの?実際の井上流の舞の世界を築き上げた井上八千代の物語り。
これを現世水谷八重子さんが、まさしく大熱演!百寿の祝い舞のシーンは圧巻の一言です。
厳しい厳しい舞いのお師匠さんである八十代から百歳の大往生まで、憎まれ役だけじゃなく、人としてのチャーミングもしみじみ演じていて凄いわ。
それに尽くす弟子、後の井上流を継ぐ娘に波野久里子さん。
<甥の勘九郎と夫婦役ってもの舞台の楽しみ
十五歳の幼い娘から、壮年の舞までこれも女の一生を巧みに演じて、そりゃもう凄い。
ああ勘三郎の娘だ、似ているといえば勘九郎よりこっちが似てるんですよ!
<顔も居住まいも、世話物の時の何とも言えない間も本当に似てる
新派の団員さんたちの美しい京舞の世界を体現する演技も本物だよねぇ。
鮮やかで、本当に歌舞伎と劇の間をゆく新派ならではのお楽しみ。
拍子木を鳴らす「手打ち花づくし」祝い事のシーンも見事だった。
こちらには、先々代と縁の近藤正臣さんがご出演、いぶし銀の演技で水谷先生とイイ味だしてる~♪
この演目の途中で、追善口上。
日替わりで豪華なトークゲストが来るのもこの公演の大きな目玉。
この日はラサール石井さんが登場で、勘三郎さんのどんな人とも(上下なにもない)平等に、の付き合いをするお人柄を中心にお喋り。
「(誰もが)自分だけが親友だと思っていた」と話して笑いを誘う。
そして、その後では、長い付き合いだと思われる柄本明が、(長いよ早く終われ…)の目配せでまた笑わせて…w
一言づつの出演者全員の追悼の辞もとってもしみじみ。良いご供養になるわ。
中村屋のもう一つの流れ、とも言える、深いご縁の新派。
また観る機会が楽しみです。
皆様もどうぞ、25日まで。
(三階席でもよく見える&超リーズナブルに観られるのも演舞場の良さだ!)