20XX年。
世界は核の炎に包まれたりはしなかったが、地球温暖化やなんやらでけっこう大変なことになっていた。
が、人類はそれなりに馴染んで日々を暮らしていた。
その年の如月の頃、あと少しで桜もほころびようかというある日、じいさんと孫娘らしき二人連れが甲子園球場のアルプススタンドにいた。
じいさんはなかなかの野球好きらしく、孫娘に今のプレーはどうだこうだとウンチクをたれていたが、ルールも知らぬ孫娘は、遠くの豆粒のような高校球児よりも、近くのチアガールのカワイイ衣装やブラスバンドの奏でる軽快な音楽の方が気になったようだ。。
「おじーちゃん、これなんのうた?」
「パラダイス銀河ゆうてな、昔光GENJIっちゅう7人組がローラースケートはいて踊りながら歌とった歌や」
「これは?」
「夏祭りゆうてな~、たぶんみんなWhiteberryの歌や思とるけど、ワシにとっては、ま、オリジナルのジッタリンジンの歌やな」
このような、じいさんのウンチク野郎ぶりの窺い知れるやり取りは、三塁側のチームの攻撃の間中ずっと続いた。
そして、攻守が入れ替わり、今度は、一塁側からブラスバンドの演奏が流れてきた。
孫娘は飽きることなく尋ねた。
「じーちゃん、これは?」
「…ほーやな。あっち東北のガッコやもんな。」
それから、じいさんは孫娘が生まれる前に起こった大きな地震のことやら、被災した地域を舞台にしたテレビドラマのことなどを話し始めた。
その話を聞きながら、孫娘は、前の年の夏休みに家族で行った常磐ハワイアンセンターを含む東北の旅行のことを思い出していた。
町はキレイだったし、住んでいる人もなんだか元気そうだったし、単身赴任中の父親へのおみやげも納得のいくものが買えたし、とてもじいさんのいうような大変なことがあったなどと想像ができなかった。
なんか、人間てスゴいな。と孫娘は漠然と思った。
という内容の娘からの手紙を、単身赴任で火星に来ているお父さんが基地で読みながら、ふと窓の外の空を見上げると、赤みがかった火星の空に、青い地球がポッカリと浮かんでいる、そんな夢を見た。
その頃、オイラまだ生きてるかな…
そしてその頃、あまちゃんのテーマって、まだ高校野球の応援で演奏されてるかなぁ…