高層ビルの仕事がほとんどだったが、
一時期、海洋建築をしていたことがあった。
父と若い衆の即戦力メンバーが
長い間泊まり込みをしていた。

長期不在の理由を知ったのは1ヶ月後の初夏。

千葉と東京をつなぐ出来かけの橋のたもとに
浮かぶ船?いや、潜水艦?
ただの平らな、だだっぴろい鉄の塊が
海面ぎりぎりに浮いている。
そして真ん中にある人ひとり通れるくらいの扉から
父が出て来た。

そこ、そこ、そこらへんにいっぱいいるから掘って行け。

遠くに見える浜辺では潮干狩り場として、
ちゃんと網の囲いがしてあって、
バケツと熊手を持った、たくさんの人で賑わっていた。

父の指す小さな干潟にはたくさんのアサリがいただろう。
しかも独り占めの取り放題だ。特権乱用というわけだ。

しかし、わたしは全くアサリを取る気がしなかった。

そんなことよりも、
そのへんてこな乗り物の中で何をしてるのか、
この巨大な橋をどうやってつくっているのか知りたかった。

そしてアサリ、人、橋の大きさの差の
激しさに圧倒されるのと同時に
とても愉快な気持ちになった。