飯場の敷地は広く、資材が置いてあることもある。
砂利山、砂山、桟木、鉄パイプ、ベニヤ板。
それは子どもたちの格好の遊び場になる。

桟木の上をぴょんぴょん渡って遊んでいた時、

突如、黒い物体が目に飛び込んだ。

何か焼け焦げて縮んだような形をしている。

ぱっくり開いた口のようなところに
ドロドロしたものが見える。
まさか動物?いや、履物か?
どちらにしても薄気味悪い。

おそるおそる近寄ってみるが

見れば見るほど何かわからない。
だんだん恐ろしくなってきた。

もしや、ツチノコ?


夕方、ばらしゃんに話して、物体を見てもらった。

「スミツボたい」


「ス、スミツボ?蛸壺?蛸の墨?」


「蛸は関係なか。線を墨でひく道具たい。」


ばらしゃんが墨壷を掴んで顔のそばに寄こしてきたので

全身全霊で拒否した。

なぜそこまで受け付けられないのか

自分でも謎だ。

とにかくあのフォルムがダメだ。

なぜあのフォルムでなければならないのか
未だに納得がいっていない。

これを書くにあたり、墨壷の情報収集 をした。


墨壷は大工の三種の神器のひとつで歴史も相当古い。

日本では法隆寺で使ったことがわかっているとか。

そして装飾を施したものも多く

インテリアとして飾る人もいるとか。

そして
東大寺の南大門の墨壷 を見た。

願わくば、そのままの君でいてほしかった。