鳶たちの話は面白い。
酒が入るとなおさら面白い。

本当なら子どもは寝る時間だが、
父は黙って聞いているだけならよいと居させてくれた。

夏ということもあるので、涼しくなる話を。

「あの現場はとうとう建たなかったなぁ。」と父が言った。

若い衆はただ頷く。沈黙が流れる。

早くも黙ってられなくなったわたしが聞いた。

「なに?なに?」

言おうか言うまいか悩んだような顔をしながら父が言った。

「事故が起こるんだ。
 その度にお祓いしてもらうんだが、また起こる。
 よくあることだが、被害が出過ぎたから取りやめになった。」

わたしの顔は引き攣った。

「よくあること?!
 じゃぁ、強引に建てちゃうこともあるってこと?」

当たり前だろうと頷く父。微笑む若い衆。

「うちの学校のプール、建設中に生き埋めになった人が
 いるっていう噂があるんだけど…」

聞いておいて、否定してくださいと祈った。

「そういうこともあるだろなぁ、昔はとくに。」

「学校なんか多いよなー。」
「貝塚だの人塚だの出てくるけど、出ちゃったのが
 御上にバレちゃうと建てらんなくなっちゃうから、なぁ?
 埋めろーっ!!て埋めちゃうんだよ!!なぁ!」

わーははははは!!(全員爆笑)

「古い橋の柱なんか“人”入ってるもんなぁ。
 そうそう人柱ってやつだよ。
 あれ、面白いよなぁ。
 出てきたらフワーって消えちゃうんだもんな。」

「んぁ?!御上に報告しろつったって、
 しょうがねーじゃねーか。消えちゃうんだから。なぁ?!」

わーははははは!!(全員爆笑)

さらに父が語る。

「昔、山奥の現場で休憩時間に山の中を散歩してたら
 すごく古い民家がぽつんとあったんだよ。
 まわり何にも無いんだよ。
 廃墟だと思って近寄ったら、突然、引き戸が開いて中から
 人らしきものが覗いてた。
 俺は恐ろしくなって走って逃げたよ。」

「あれは、絶対、落人だ。」

父も若い衆も青ざめていた。

結論。鳶は何よりも落人が怖い。