高校の帰り。
地下鉄に乗っていた。

向かいの席に、埃まみれのおっさんが座った。

おっさんは紙袋を持っていた。
多分、土工だろう。
紙袋には着替えが入ってるんだろう。
コンクリートでも打ってきたか?
着替えても、清潔感は出せないね。

近くにいた客がいつの間にか遠のいた。
みんな浮浪者だと思っているんだろうなぁ。

うちの若い衆も車で現場に行くのが基本なのだが、
稀に電車などで行くこともあった。
父は普段から、若い衆には身綺麗にするよう注意していた。
偏見に合いやすいからだ。

降車駅に着いた。
改札を抜け、階段を登っていると
後ろから「お嬢さん!」と呼ぶ声。

一瞬にして、わたしの中の理想主義が乙女心に負けた。

地下の影響で響き渡る「お嬢さん!」の声を背に
一度も振り返らず、走って逃げた。