わたしがデザイン事務所に勤めに出始め、
少し変にかぶれてた頃の話。

その年の正月旅行は箱根だった。
温泉を楽しんだ後、特にすることがないというので
親方の娘という立場を利用し
「箱根の森美術館へ行こう!」と提案して
強引に通した。

「芸術なんてさっぱりわからない」と言っている人たちが
どう反応するのか、すごく興味があった。
「芸術なんてさっぱりわからない」とはいうものの、
鳶には美的センスが潜在しているように思えていたから
もしかしたら何か開花するかもしれないとも期待した。

美術館に着いた。

「ゲージツはバクハツだ。」とくり返す者。
「わからない。そもそも題名が読めない。」と言う者。
作品よりも彫刻などの設置の仕方を褒める者。

勝手な期待をして勝手に落胆し始めたわたしに
バラしゃんが「あれはいい。ピカソの皿。」と言った。

まともな感想に、わたしは嬉々として頷いた。

「あの秋刀魚、美味そう。」




バラしゃん、あの魚、舌平目だってさ。

わたしもね、今、知ったよ。