わたしがハイハイできるようになった頃、
わたしと母は父の仕事場である
とある高層ビルの現場に連れてこられた。
ニッカポッカ姿の父はわたしを抱き
階段を登っていった。
仮囲いの足場板にわたしを降ろし、
父は1区間離れたところから、
わたしに「こっちへ来い」と手招きした。
母は地上から「やめて」と叫び続けた。
わたしはまっすぐ父のもとまでハイハイした。
中学にあがる頃、この話を聞いた。
父は「ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とし、
這い上がった子だけを育てるんだ。それと同じだ。」と
誇らしげに語った。
ジャングル大帝でレオも
この試練を乗り越えたんだそうだ。
わたしは感動して目をキラキラさせた。
そんな父娘のやりとりを見て
母は途方に暮れていた。
