道路工事で働いている人を指差しながら、

ある歯科医が言った。


 ああいう人間が嫌いだ。

 自分はコドモの頃から嫌な勉強も

 人一倍努力してやってきた。

 だから今こうしていられる。

 ああいうのは怠け者だ。

 怠けてきた結果だ。


一緒に居た友人は肉体労働者を

差別するな!とばかりに怒っていた。


飯場の子のわたしとしては

一緒になって怒りそうなものだが、

意外にも、「へーそうなんだ」くらいの

冷めた感情しか沸かなかった。


それよりも、この歯科医は

自分の努力を認めてもらうことに

すごく飢えているように見えた。


飯場の人達はそういう意識は持ってなさそうに思う。

持っていたかもしれないけど、飯場に来た時点で

捨てたか超越したか、そんな印象を受ける。


だからこの歯科医のように他人の人生になど興味も無いし

人と比べて幸せを計ることも無い。

自分らしさとか生きがいとかそんなものも語らない。

ご飯食べて働いてお金稼いでビール飲んで競馬やる。


そんだけ。


いたってシンプル。


肉体労働者が全部こうだとは言わないけど。


怒りが沸かなかったのは

努力を認められたい人間が

そんなのどうでもいいと思ってる人間を

必死に罵ってることに

人の世の皮肉さを感じたからだろう。