近所の八百屋でなぜかヒヨコを売っていた。
しかも雌鳥だという。
かわいくてかわいくて、わたしは母に頼んで
1羽買ってもらった。
ヒヨコのピヨちゃんはとても愛らしかった。
手の中で眠るピヨちゃん。
よちよちとついてくるピヨちゃん。
黄色い羽から白い羽に生え変わり
くちばしも爪も鋭くなり
鶏冠がプラプラする頃には
手がつけられないほど凶暴化した。
お約束通り雄鶏だった。
木箱に金網をつけた中に入れて飼うようになった。
手のひらにとうもろこしなどを乗せて
ついばませていたのも、その頃は遠くから
投げ入れるようになっていた。
それでもなんとかコミュニケーションを図りたくて
金網から指を入れ触れようとするが、
くちばしで突かれ流血するの繰り返し。
自分の何がいけなかったのか、
これからどうやっていけばいいのか、
豹変したピヨちゃんを眺めては悩んだ。
ある朝、餌を持ってピヨちゃんのところへ行った。
静かだなと思った。
木箱に散った羽、金網についた羽。
母とお手伝いさんの西崎さんに
「ピヨちゃん、いないんだけど」と言った。
ふたりとも何も答えないで
さみしそうに微笑んだ。
不思議と悲しみはなかった。
わたしの胃袋に入っているのだろうか?
そんなことばかり考えていた。