飯場は乱闘がよく起こる。
飯場に集まってくるのは、
ほとんどがドロップアウトした人たち。
もちろん中には鳶職を
天職としている人もいるが稀だ。
人というのはコンプレックスの塊だ。
鳶vs土方、出稼ぎvs山谷あがり、と
コンプレックスが原因で乱闘が起こる。
特にアルコールが入ると起こりやすい。
ドロップアウトして世間に背を向けて
ここまで来たというのに、結局は地位や名誉という
呪縛から逃れられないものなんだなと感じた。
夜中、2階で乱闘が始まると、
父が怒鳴り込んでいく。
怒声や殴る音や倒れる音が響きわたり
しまいには階段から人がガラガラと
落ちる音も聞こえてくる。
わたしは怖くて怖くて布団をかぶっていた。
いつか父が殺人犯になるのではないかと
気が気ではなかったのだ。
大人になって北海道のにしん御殿を見学した際、
おもしろい話を聞いた。
大勢の漁師が寝泊りする部屋があり、
なぜか天井がとても低かった。
背の低いわたしでも腰を屈めたくなるくらい。
理由は気性の荒い漁師はすぐ喧嘩をするので
天井を低くして取っ組み合いができないように
主が工夫したんだそうだ。
飯場もそうすれば良かったのにな。