「飯場」は職業差別にあたる言葉だそうだ。

 

母は自分のこどもが差別されることをとても恐れていた。

 

 

母はわたしに「飯場」ではなく「宿舎」と言いなさいと言った。

 

差別の意味もわからないわたしは、

なぜそんな些細なことを気にするんだろうと不思議に思った。

 

銭湯に行ったある日、番台のおばちゃんとお客さんが

 

母とわたしと妹をチラチラ見ながらヒソヒソ話していた。

飯場の子がなんだかんだ・・・と聞こえてきた。

 

帰り道、母は激しく怒っていた。

 

今にも泣きそうな勢いで。

 

わたしはそれでもやっぱり差別の意味がわからなくて、

 

そんなことよりも母がかわいそうで仕方なかった。

母がそんなに辛いのなら、差別されないように気をつけよう、

「だから飯場の子は・・・」と言われないようにしようと思った。

歪みが生じていることを感じつつ。

 

幼稚園~中学まで、わざわざ車で

 

二十分もかかる隣の町へ越境していた。

その町には祖父と祖母の家があったので、

学校側には、そこに住んでいることにしていた。

要するに飯場に住んでいることを内緒にしていたのだ。

 

わたしはいじめにあったことがない。

 

もちろんいじめをしたこともない。

それは「飯場の子」を内緒にしていた成果だったのか?

「飯場の子」と知られていたらいじめられたのだろうか?

 

今でもわからない・・・。

 

 

 

ただ、これだけは、はっきりしている。

 

 

 

わたしは宿舎で育てられたことを感謝している。

 

確かに嫌な思いもしたけれど、その分、タフになったと思える。

お母さんは、もう心配する必要はありません。